『イカゲーム』のイ・ジョンジェにGOT7のジニョン、韓国トップスターが出演するアート
■人気女優ハン・ヒョジュからのアプローチも
『世界の終わり』の成功は、ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホの制作の追い風となった。北京の北朝鮮レストランが舞台の『妙香山館』(14~17年)では、北朝鮮の女性従業員をハン・ヒョジュが、レストランを訪れる韓国の画家をコ・スが演じている。ハン・ヒョジュの出演は、彼女が演技の幅を広げるために『世界の終わり』のような作品を撮るクリエイターと仕事をしたいので誰か紹介してほしい、とコンタクトがあったことから実現した。ハン・ヒョジュは翌15年に公開された映画『ビューティー・インサイド』でも話題を呼んだ人気女優。コ・スもドラマ・映画の両方で高い人気を誇る俳優。彼はギャラリーの紹介で出演を決めたが、両者ともに無報酬でこの仕事を受けたという。
劇中に登場する「妙香山館」は、、北朝鮮が外国で営む架空のレストランで、韓国と北朝鮮の人々が特別な許可なく対面できる場所だ。ハン・ヒョジュとコ・スの丁寧な演技は、そこで交わされる男女の穏やかな会話に真実味をもたせている。幻想的な舞踊シーンに、しっとりした色調があいまって、一幅の山水画のようなまとまりを見せる。
■新作2点にも若手の演技派が参加
金沢の展覧会で、最も大きな展示室で公開された『どこにもない場所のこと:フリーダム・ヴィレッジ』(21年)は、GOT7のジニョンと若手演技派として知られるパク・ジョンミンが出演。韓国と北朝鮮の間の非武装地帯(DMZ)の韓国側に位置し、唯一民間人が200名ほど暮らす通称「フリーダム・ヴィレッジ(自由の村)」、台城洞(テソンドン)という村を題材とした作品だ。2面の背中合わせに配置された大型LEDパネルの一方に自由の村の住人(パク・ジョンミン)、もう一方に未来世界のシェルターで生きる男(ジニョン)が映し出される。これらの映像に加えて、写真、スピーカー、臓器やマスクのオブジェ、自由の村の風景画などで構成されたインスタレーションだ。イデオロギーが生んだ境界を越えて交錯する両者の思いは切ないが、一方で希望も感じられる。