『イカゲーム』のイ・ジョンジェにGOT7のジニョン、韓国トップスターが出演するアート
2人が選んだのは、映画製作のプロと組むことだ。『箪笥』(03年)などを手がけた映画製作会社「春」のオ・ジョンワンをプロデューサーに迎え、撮ったのが『世界の終わり』だ。2つのスクリーンの一方は現在を生きるアーティストの男、一方はポスト・アポカリプスの未来世界に生きる女が映し出される。同年に公開された映画『10人の泥棒たち』の製作が進行していたイ・ジョンジェに、ドラマ『ごめん、愛してる』(04年)などで幅広いファンをもつ女優イム・スジョンという豪華キャスティングだ。
イ・ジョンジェはオ・ジョンワンの紹介で参加するようになったが、とてもアートが好きでコレクターでもあるので制作がスムーズに運んだという。『シネ21』(12年)の記事によれば、イ・ジョンジェは、2人がエリック・フィッシュルのような絵をつくりたいと言えば「いいですね」と答え、レンブラントのようにやってほしい、と言えば「はい」と応じてくれたそうだ。
女の役は、女性性と男性性とが重なるような未来の人類を表現する俳優を探していたところ、ファッションデザイナーで映画のアートディレクションも手がけていたチョン・グホがイム・スジョンを推薦。彼女は商業作品以外にも挑戦したいと考えていたところだった。イム・スジョンは、ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホが15年のベネチアビエンナーレに出品した『縮地法と飛行術(The Ways of Folding Space & Flying)』の主演も務めている。
『世界の終わり』は現在と未来が2つのスクリーンでパラレルに進行する。関係は複雑だが、登場人物を誇張することなく表現した2人の演技と、作り込まれたセットや絶妙なライティングによって物語へ引き込ませる。旧世界(現在)の文化を知らない未来世界の女(イム・スジョン)が、男(イ・ジョンジェ)が制作に用いた電飾の光に反応して取った行動は、きわめて純粋に映るだろう。これを撮りながら、芸術の本質は何だろうか?と悩んだというムン・キョンウォンは、小さな電球がキラキラ輝く時が、説明なしに美しさを自覚する瞬間だと考えたと語っている。