最新記事

アート

『イカゲーム』のイ・ジョンジェにGOT7のジニョン、韓国トップスターが出演するアート

2022年9月3日(土)15時45分
井手ゆい
『世界の終わり』

『世界の終わり』(2012年)2 チャンネル・ヴィデオ・インスタレーション 13分35秒 金沢21世紀美術館蔵 © MOON Kyungwon and JEON Joonho

<金沢21世紀美術館で開催された『ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ』展に韓国のトップスターが出演。どんなアートなのか?>

出遅れて8月の終わりに金沢21世紀美術館へ観に行き、あまりの衝撃に会期終了間際に諦め悪くこれを書いている。展覧会『ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ どこにもない場所のこと』(9月4日まで開催)の作品に韓国トップスターが幾人も出演していたからだ。

『イカゲーム』のイ・ジョンジェ、ボーイズグループGOT7のメンバーで俳優としての人気もうなぎのぼりのジニョン、大ヒットドラマ『恋のスケッチ〜応答せよ1988〜』の名演で知られるリュ・ジュンヨル。これはいったいどういうアートなのか?

■2人組アーティスト、ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ

2人はともに1969年生まれ、ムン・キョンウォンはソウル、チョン・ジュンホは釜山とソウルを拠点とし、それぞれアーティストとしてのキャリアを重ねていた。2007年、台北ビエンナーレに向かう飛行機で顔を合わせたことを機に親交を深め、一緒に映像作品をつくろうと意気投合。アーティスト・デュオとしての活動を09年から開始した。映像を中心に、立体や写真、絵画などを組み合わせたインスタレーションなどを発表している。

220903ohs_kmm02.jpg

ムン・キョンウォン(左)とチョン・ジュンホ

重要なポイントは、2人が現代アートに対して危機感を抱いていたことだ。12年、2人は映像作品『世界の終わり』をドイツの国際芸術祭ドクメンタで発表。当時、韓国の映画雑誌『シネ21』のインタビューでチョン・ジュンホは、今日のアートは大衆との疎通を図りたいとしながら、実際には難解で閉鎖的だと語っている。「美しさや感動が現代アートに存在するのか疑問に思った」。アートとは何か?を論じる作品をつくりたかったという。

そこで2人は、アートとは何か?アートの役割とは何か?という問いを、経済学者や動物学者、詩人、映画監督、建築家など、さまざまな専門家に投げかける学際的なプラットフォーム「News from Nowhere」を立ち上げた。これは、1890年にウィリアム・モリスが著した同名小説(邦題は『ユートピアだより』)からインスピレーションを得たプロジェクトで現在も継続されており、2人の映像作品にも関係をもっている。

■観客に我慢を強いる映像作品への問題意識

「アーティストによる映像作品のほとんどが『酷い』」。これは『美術手帖』(2022年7月号)のインタビューにおけるチョン・ジュンホの発言だ。「何も起こらなかったり、単純な行為を反復するだけだったりする長時間の映像に、観客が我慢強く付き合わなければならないという考えは間違っていると思います」と述べている。09年に協働を始めた頃から、2人は商業的な映画と比較して、アートの映像作品の質に物足りなさを感じていた。また、各々が映像を制作していたが満足できないところがあり、演出に対する切実な欲求を抱えていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中