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マッシが分析。コーヒーゼリー、あずきバー、タココロッケ...日本人は食材を生かす天才だ

2022年8月3日(水)16時20分
マッシ(マッシミリアーノ・スガイ)(日伊通訳者、金沢在住)
日高屋、てんや、星乃珈琲店

日本の食の豊かさは世界屈指。多様なチェーン店もその仲間だ HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

<日本食が外国人に人気な理由の1つは甘辛い味付けだが、僕は発想力こそ日本食の神髄だと思う。豊かな食文化は実は「初心者フレンドリー」でもある>

(※本誌8月9日/16日号「世界が称賛する日本の暮らし」特集より)

日本に住んでいるイタリア人の僕に(今年で来日して16年目だ)、必ず飛んでくる質問がある。日本の食文化に慣れているかどうかについてだ。例えばお箸やお茶は大丈夫か、納豆や刺し身などのいわゆる「日本食」が好きかどうか。
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日本に長く住めば住むほど、このような会話が増えている気がする。日本人から見ると、外国人にとって日本の食文化は大きな壁になると思われがちだけど、実は意外に「初心者フレンドリー」な部分もあるのだ。

日本食が外国人に人気な理由の1つは甘辛い味付けだ。醤油と砂糖、みりんなどの優しい味付けは、外国人をとりこにする。だけど僕はむしろ日本人は食材を上手に生かすことに対して、天才なのではないかといつも思っている。

例えば、コーヒー文化。コーヒーといえばイタリアではエスプレッソやカプチーノのイメージが強い。日本のアイスコーヒーやコーヒーを使ったゼリーやフロートは、実はイタリアでは見たことがない。

そもそもコーヒーに氷を入れる発想がないのだ。イタリアでは「カフェ・シェケラート」というおしゃれでカクテルのような冷たいコーヒーはあるけど、頼むイタリア人は少ないだろう。

パスタとトマトケチャップを使ったナポリタン、カレーとパンを使ったカレーパン、お米とホワイトソースを使ったドリアなどの料理も、海外にありそうでない。実は全部、日本発祥の素晴らしい発明の数々だ。

日本料理と言いながら遠い国の料理のような雰囲気を感じるから、不慣れな外国人にも食べやすいと思う。

寿司や刺し身、生魚を食べられない外国人は多いだろう。タコは悪魔のイメージがあって食べる習慣がない国もあると聞いたことがある。ところが、日本人の手に掛かればうまく材料を生かして楽しく食べられるのだ。タココロッケ、タコサラダ、タコのカルパッチョにすると、おいしそうに見えてくる。

日本食はバランスがよくて、好きな組み合わせで食事を楽しむことができるから、苦手なものでも自分の口にピッタリくる味を楽しめる。

個人の和食屋さんからチェーン店まで定食がたくさんあるなかで、おかずの中身を選択できる仕組みも珍しくはない。生魚を食べられなくても焼き魚、魚の煮込み、干し魚、魚入りの味噌汁などを選べばいい自由さは、さまざまな文化や好みを持つ外国人にまで優しいと感じる。

このように、日本人が生み出す料理の喜びは、思いがけない発想と安心させられる味の合わせ技なのだ。

スイーツにしても、こだわりが強い人だってコンビニのスイーツを食べれば笑顔になるに違いない。

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