日本初のアフリカ人学長が「価値観」を揺さぶられた5冊の本
南アフリカの英雄ネルソン・マンデラは、マリでもさまざまな場面に顔を出す。アパルトヘイト(人種隔離政策)時代には、自由を歌うポピュラー音楽に彼の名前がよく登場したものだ。だが私は、なぜマンデラが静かに忍耐を重ねて刑務所に居続けたのか、彼の神髄には目を向けず、ただレゲエに乗せたマンデラの歌を口ずさみ、「フリー、マンデラ!」と叫んでいた。
彼の闘いの本質に気付かせてくれたのは、『ネルソン・マンデラ 私自身との対話』だ。この本の前後に出合ったガンジーの本と併せて印象に残ったのは、相手を責めるのではなく自制することの大切さ。若者は「戦えばいい」という熱い心で動きがちだが、静かに抗議することが最も強いメッセージを発すると思うようになった。私自身、大学時代に小さな学生運動を経験した。何かを求める際は何かを破壊すればいいと考える学生が多く、自制することに意義を見いだす人はいなかった。
『ネルソン・マンデラ 私自身との対話』
ネルソン・マンデラ[著]
邦訳/明石書店
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私も、自立したい、自由になりたいと思うことは多かった。それを実現させるには知識を得て能力を高め、自分の選択肢を増やすべきだと信じていた。だが、果たしてそれで本当に自由になったか。気付いたのは、自分の意識の中にある自由の大切さで、その意識をどう持つか、持ち続けるかということだった。
(構成・前川祐補)
<2020年8月11日/18日号「人生を変えた55冊」特集より>
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2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか