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日本初のアフリカ人学長が「価値観」を揺さぶられた5冊の本

2020年8月12日(水)16時25分
ウスビ・サコ(京都精華大学学長)

自分が気付かないうちに刷り込まれている考えや意識を、誰しも持ち合わせていると思う。私の場合、それに気付かせてくれた1冊が『オリエンタリズム』で、西洋の優位性を再考させられた。


『オリエンタリズム』
 エドワード・W・サイード[著]
 邦訳/平凡社

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私自身、オリエントという言葉を何げなく口にしていた。東洋社会をある意味「上から目線」で、エキゾチックなものと見ていた。自分が受けたのが西洋的な教育で、西洋中心主義で物事を見ていた気がする。

著者のエドワード・W・サイードは、オリエントという考え自体が西洋の作り物だと考えた。西洋人は西洋に属さないものを東洋と見なし、本質を見ずに彼らが決め付けた面白い部分だけを評していた。いわば、西洋からほかの文化をどう見下すかという考えだ。

日本に来てから読み直し、実は日本もそうだったと気付いた。アジアにありながら、日本は自分たちを西洋だと思っている。「日本とアジア」とか「アジアの国々」というときは日本を含まない。そういう実態にショックを受けた。

この本で考えさせられたのは、他人への批判は慎重にすべきということ。先入観や従来の評価基準で見ると危険だ。世界の秩序形成を優劣ではなく、1つの人間社会として考える必要性を感じた――。

人間は時にアイデンティティーを意識する生き物だが、私も外国に住み始めてから初めてその意識が生まれた。

名字を伝えるだけで素性が分かり合えるマリでは、アイデンティティークライシスなど起きない。だが外国では自分が信じていた存在意義まで問われ、自分とは何者かを考えることになった。『黒い皮膚・白い仮面』は、そんなときに印象に残った一冊だ。


『黒い皮膚・白い仮面』
 フランツ・ファノン[著]
 邦訳/みすず書房

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これはマリの植民地時代の終盤にパン・アフリカニズムについて書かれたもの。著者のフランツ・ファノンは、かつて奴隷が送られたカリブ海の仏領マルティニク島の生まれで、黒人のインテリだった。

ファノンは後年、医師としてアルジェリアに派遣された。彼はそこで、先祖が属していたはずのアフリカでフランス出身の「白人代表」として振る舞わねばならず、白人や外国人かぶれを余儀なくされた。植民地化の意義や自由について考えるようになり、「白人」として地元民の束縛に参画しつつあった自分を問い直す。

学生時代に読んだときは、遠く離れた島の人がアフリカに思いを巡らせることにさほど感銘を受けなかった。でも外国に住むようになり、彼のアフリカへの憧れ、アフリカ的なアイデンティティーを取り戻そうとする姿が理解できるようになった――。

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