カンヌやアカデミーだけじゃない! 個性派作品が集まるユニークな映画祭
映画祭はお国柄を反映する
また、韓国らしい映画祭といえば思い出されるのは「DMZ国際ドキュメンタリー映画祭」だ。DMZとは「DeMilitarized Zone=非武装地帯」の意味で、分断国家ならではのネーミングがつけられたドキュメンタリー中心の映画祭である。もちろん南北の問題を扱った作品もあるが、それだけでなく平和をテーマにした国内外の映画が多い。今年も9月20日〜27日まで開催が決定している。開催場所は北朝鮮との国境に近い京畿道の高陽市(コヤン市)および坡州市(パジュ市)にある映画館というのも特徴的だ。
他にも、フードを扱った映画のみ上映する「ソウル国際食品映画祭」。また、そんなにも上映作品があるのかと思ってしまうほどテーマを絞った「猫映画祭」「ソウル舞踊映画祭」「ソウル国際建築映画祭」なども開催されている。世界中の建築を扱った映画が映画祭を開催できるほど制作されているのか気になってついつい上映作品一覧をチェックしてしまった。
これらの映画祭は、釜山国際映画祭などに比べると小規模ながらも、その特徴として上映会場はロッテシネマやメガボックスなど立派なシネコンで行われている。また、映画祭から制作支援金や第一線の監督との映画製作技術レッスンなどの講演会が実施されるなど、企画内容も大規模映画祭に負けていない。映画祭関係者によると、最近は協賛会社獲得も一時期に比べ難しくはなったといいつつも大手飲食会社や企業などがサポーターとして名を連ねている。日本の映画会社や興業会社もこのような個性的な映画祭を企画したり、開催のために1週間ほどスクリーンを貸すなどしたらどうだろうか。
小規模映画祭は大規模映画祭に対抗するため、個性的な自分たちのカラーを探しはじめている。今後はさらに観客が自分の好みのテーマに合わせて映画祭に足を運ぶことができるようになるだろう。映画祭はとにかく毎年長く続けていくことが定着するための第一歩だ。毎年、「ああ、もうこの映画祭が始まる季節か」と観客に意識させるようになって初めて成功といる。また、その存在が知られていくことによって世界中から良質な作品がその映画祭に集まってくるのだ。
現在カンヌをはじめとする世界の大手映画祭では、「配信サービス映画vs.映画館で見る伝統」という バトルがくりひろげられている。既存の大型映画祭がそんないさかいをしているうちに、これらを出し抜くような、さらなる個性的な映画祭の出現を期待したい。
*一部情報を修正いたしました(2019年7月30日)