最新記事

映画

カンヌやアカデミーだけじゃない! 個性派作品が集まるユニークな映画祭

2019年5月20日(月)19時45分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)


市民参加の中之島とビジネス化狙うソウル

nakanoshimafilmfes.jpg

大阪の中之島で行われた自主映画の映画祭「中之島映画祭」(撮影=筆者)

しかし、上記で紹介してきたような国際映画祭を開くのは予算や体制などが大掛かりになってしまう。逆にコンパクトにテーマを絞った映画祭というのも多く開催されるようになった。筆者が5月上旬に訪れた大阪の中之島映画祭もそういった映画祭の一つだ。

中之島映画祭は、大阪の中心地・中之島でGWの期間中に行われる市民のお祭り「中之島まつり」に合わせて開催される自主映画のための映画祭。特色としては、国指定重要文化財である大阪市中央公会堂内で映画上映されること。また、入場料が無料で途中入退場自由な点がある。
作品も10〜45分程度の短中編が中心で、観客のアンケートによって最終日に大賞が決定される。監督や俳優らも多く招待しており、上映後に本人たちから撮影秘話など聞けるのも楽しい。

こうした独立映画を取り上げる映画祭として韓国で有名なのが「ソウル獨立映畫祭」だ。こちらの特色としては、映画祭での上映作品を全国で上映会イベントを行ったり、DVD制作、オンライン上映、インディーズ映画のみを扱った雑誌の発行など、映画祭だけにとどまらず、韓国内でのインディーズ映画そのものをもっとメジャーにするため多くの力を注いでいる。韓国では釜山映画祭が大成功を収めて以来、大小数多くの映画祭が町おこしや、あるテーマを世間に注目させるために企画されている。ユニークで個性がひかるものが多く多様性が注目されているが、このソウル獨立映畫祭もそういったものの一つだ。

ほかにもいくつか韓国のユニークな映画祭を紹介しよう。秋に行われる「障碍者映画祭」は今年で20回を迎える。昨年は90以上の出品があり、その多くは何らかの障害をもった人びとのドラマを描いた映画を上映している。2015年からは映画祭が企画段階の映画を資金サポートするプログラムも実施中だ。完成後は映画祭で上映もされる。

ソウル老人映画祭」通称SISFFは、その名の通り老人による老人のための映画祭だ。上映作品にもよるが、日本や米国などは時間に余裕のある中高年層も映画館に足を運ぶことが多いが、韓国で映画館に行ったことがある人は日本と違い映画館の客層が若者だらけなことに気付くだろう。老人映画祭は韓国のその現状に逆行するような映画祭である。老人がテーマとなった劇映画やドキュメンタリーはもちろん、国内コンペティション部門では満60歳以上の監督が制作した映画のみ応募できる部門もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中