カンヌやアカデミーだけじゃない! 個性派作品が集まるユニークな映画祭
市民参加の中之島とビジネス化狙うソウル
しかし、上記で紹介してきたような国際映画祭を開くのは予算や体制などが大掛かりになってしまう。逆にコンパクトにテーマを絞った映画祭というのも多く開催されるようになった。筆者が5月上旬に訪れた大阪の中之島映画祭もそういった映画祭の一つだ。
中之島映画祭は、大阪の中心地・中之島でGWの期間中に行われる市民のお祭り「中之島まつり」に合わせて開催される自主映画のための映画祭。特色としては、国指定重要文化財である大阪市中央公会堂内で映画上映されること。また、入場料が無料で途中入退場自由な点がある。
作品も10〜45分程度の短中編が中心で、観客のアンケートによって最終日に大賞が決定される。監督や俳優らも多く招待しており、上映後に本人たちから撮影秘話など聞けるのも楽しい。
こうした独立映画を取り上げる映画祭として韓国で有名なのが「ソウル獨立映畫祭」だ。こちらの特色としては、映画祭での上映作品を全国で上映会イベントを行ったり、DVD制作、オンライン上映、インディーズ映画のみを扱った雑誌の発行など、映画祭だけにとどまらず、韓国内でのインディーズ映画そのものをもっとメジャーにするため多くの力を注いでいる。韓国では釜山映画祭が大成功を収めて以来、大小数多くの映画祭が町おこしや、あるテーマを世間に注目させるために企画されている。ユニークで個性がひかるものが多く多様性が注目されているが、このソウル獨立映畫祭もそういったものの一つだ。
ほかにもいくつか韓国のユニークな映画祭を紹介しよう。秋に行われる「障碍者映画祭」は今年で20回を迎える。昨年は90以上の出品があり、その多くは何らかの障害をもった人びとのドラマを描いた映画を上映している。2015年からは映画祭が企画段階の映画を資金サポートするプログラムも実施中だ。完成後は映画祭で上映もされる。
「ソウル老人映画祭」通称SISFFは、その名の通り老人による老人のための映画祭だ。上映作品にもよるが、日本や米国などは時間に余裕のある中高年層も映画館に足を運ぶことが多いが、韓国で映画館に行ったことがある人は日本と違い映画館の客層が若者だらけなことに気付くだろう。老人映画祭は韓国のその現状に逆行するような映画祭である。老人がテーマとなった劇映画やドキュメンタリーはもちろん、国内コンペティション部門では満60歳以上の監督が制作した映画のみ応募できる部門もある。