「ヒュッゲ」ブームの火付け役が日本人に伝えたい幸せのコツ
テレビ収録のために来日した『幸せってなんだっけ?――世界一幸福な国での「ヒュッゲ」な1年』の著者ヘレン・ラッセル Newsweek Japan
<2016年から世界的なブームとなっている「ヒュッゲ」だが、きっかけはデンマークに移住したイギリス人ジャーナリストの体験記だった。来日した著者に、すぐに実践できるヒュッゲのコツを聞いた>
「世界一幸福な国民」とも言われるデンマーク人。その幸せの秘訣が「ヒュッゲ」であることが注目され、2016年から世界的なブームが起きている。多くの関連書籍が刊行される中でも、このヒュッゲ・ブームの火付け役となったのが、イギリス人ジャーナリスト、ヘレン・ラッセルの『幸せってなんだっけ?――世界一幸福な国での「ヒュッゲ」な1年』(鳴海深雪訳、CCCメディアハウス)だ。
「居心地がよい」「こころ安らぐ」などと説明されることが多いが、ヒュッゲの定義や概念を説明するのは難しいとされる。その謎の言葉「ヒュッゲ」に迫るべく、ラッセルがデンマーク人と幸福に関するデータを綿密に調べ、専門家を訪ね、自ら1年間のヒュッゲ体験をして綴ったのが本書だ。このたび、テレビ収録のために来日したヘレン・ラッセルにヒュッゲについて聞いた。
これまでデンマークで5年間暮らしてきたラッセルなりの解釈は、ヒュッゲとは「感情的に抑圧されることなく、穏やかに喜びを感じること」。イギリス人のラッセルにとっては今もヒュッゲを練習する感覚だというが、デンマーク人にとっては無意識的なものであり、哲学であり、生き方だという。
本書の中でラッセルは、デンマーク人の幸せのあり方を「デンマーク的に暮らす10のコツ」として挙げている(392~395ページより)。
1 信頼する(もっと信頼する)
2 『ヒュッゲ』をする
3 体を使う
4 美に触れる
5 選択肢を減らす
6 誇りを持つ
7 家族を大事にする
8 すべての職業を尊敬する
9 遊ぶ
10 シェアする
インタビューでは、この「10のコツ」のうち、日本人には「2 『ヒュッゲ』をする」をいちばん勧めたいと教えてくれた。
「日本だけでなくイギリスも同じですが、先進国では長時間働き、体型を保つためにダイエットに励んだり、若さをキープする努力をしたりと、自分を鍛え上げることが評価されがちです。しかし、デンマークでは家族や友人と心地よい時間を過ごすことが何よりも大切な価値になっています。仲のよい人たちと一緒にリラックスして過ごすことが評価されるのであれば、簡単ですよね」
また「1 信頼する(もっと信頼する)」についても、他人を疑うことをやめればストレスがかなり減るという。デンマーク人はベビーカーに子供を寝かせて外に置きっぱなしにするという話を聞いたことがあるかもしれないが、これも社会が信頼で成り立っていることから可能となっている。
実際、ラッセル自身もよく車の鍵を掛けっぱなしにしているが、車を盗られたことも、盗られる心配をしたこともないという。互いに疑い続けると緊張を強いられてストレスになるだけでなく、結果として互いを信用できない息苦しい社会を創り出すことにつながる。