最新記事

お金持ちの教科書

学歴や序列さえも無意味な「新しい平等な社会」へ

新しい資本の時代には、銀行の支配が弱まり、ビジネスリソースを持つ人より真に才能のある人が活躍できるようになる

2015年11月27日(金)06時05分

秩序の変化はすぐそこに やがて訪れる新しい平等の社会は、甘えを許さない厳しい世界でもある urbancow-iStockphoto.com

「楽天はすでにオールドエコノミー」と、本誌ウェブコラム「経済ニュースの文脈を読む」でお馴染みの評論家であり、億単位の資産を運用する個人投資家でもある加谷珪一氏は言う。インターネット環境の急激な進展により、新しい資本の時代が動き始めており、そこでは稼ぎ方も働き方も、すべてが変わるのだという。

 楽天は設立が1997年で、株式店頭上場が2000年。わずか3年で上場している。今では1万2000人以上(連結)の従業員を抱え、売上高は6000億円弱(2014年)という日本を代表するネット企業だ。これのどこがオールドエコノミーなのか。

 加谷氏によれば、最近では「設立からわずか数か月で企業を売却し、上場することなく巨額の富を生み出すケースが続出している」という。オフィスなどなく、自宅で始めたビジネスというのも珍しくない。もはや会社の体裁を整え、社会的な信用を得る必要さえないのだ。加谷氏が「新しい資本の時代」と呼ぶゆえんである。

 これまでは、お金持ちになれる人は、起業家か投資家と相場が決まっていた。これからの時代には、新しい「富のルール」を知り、情報を制する者だけがお金持ちになれる、と説く加谷氏。11月27日発売の新刊『これからのお金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)では、10年後の未来を前提に、どうすればお金持ちになれるかを分析・解説している。

 ここでは、本書の「第4章 これからの『富のルール』を知る」から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。第3回は「学歴や序列さえも無意味な『新しい平等な社会』へ」。

<*下の画像をクリックするとAmazonのサイトに繋がります>


『これからのお金持ちの教科書』
 加谷珪一 著
 CCCメディアハウス

※第1回:ピケティ理論はやがて成立しなくなる はこちら
※第2回:だから、もう「お金」は必要ない はこちら

◇ ◇ ◇

 もし新しいネット時代の到来が、資本主義のメカニズムにも影響を与えるものだとすると、社会における権力構造にも影響が出てくるかもしれない。

 資本主義の世界では、資本の提供という役割を担っている資本家の立場は非常に強い。特に、あらゆる産業に対して資金を融通する銀行の影響力は絶大である。日本は規制が強く、他の先進国に比べると銀行が過剰に保護されているので、その傾向はさらに顕著である。

 先ほどは、事業をスタートさせるにあたり、資金調達のために労力のほとんどを割かれてしまうという現実について説明した。また事業をスタートさせた後も、基本的には借金の返済義務から解放されることはなく、銀行の影響力行使は続く。

 極端な話をすれば、日本では銀行から認められた事業しか、立ち上げることができないと考えてもよい。銀行は基本的にお金を貸すことが仕事なので、余分なリスクは取りたくない。有望だがリスクが高いというビジネスが立ち上がりにくいのは、こうした理由もある。

 この図式は大企業になっても同じである。事業が軌道に乗り、大きな企業に成長したあとも、やはり資金を握る銀行の影響力は強い。経営危機を起こしたシャープはすでに実質的に銀行の支配下にあるし、不正会計問題で揺れた東芝も、銀行管理が囁かれている。

 銀行は資本という圧倒的なパワーを背景に、企業の活動を事実上左右することができるわけだが、この仕組みを100%利用し尽くしているのが中央銀行制度である。

 日本の中央銀行である日本銀行(日銀)は、現在、量的緩和策を実施しており、市場に大量のマネーを供給している。新聞ではこのように記述されるので、日銀が市場にお金をばらまいているように見えるのだが、実際は少し異なっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ショルツ独首相、2期目出馬へ ピストリウス国防相が

ワールド

米共和強硬派ゲーツ氏、司法長官の指名辞退 買春疑惑

ビジネス

車載電池のスウェーデン・ノースボルト、米で破産申請

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中