最新記事

お金持ちの教科書

学歴や序列さえも無意味な「新しい平等な社会」へ

2015年11月27日(金)06時05分

 日銀が国債を買い取っているのは主に銀行からであり、これは銀行が日銀に開設した当座預金の残高を増やしているに過ぎない。量的緩和策に関連して、マネタリーベースという言葉を聞いたことがある人も多いと思うが、マネタリーベースとは、主に日銀が金融機関に提供したマネーの金額を指している。

 つまり日銀は、基本的に銀行に対してしか、資金の出し入れをしない。銀行は企業や個人の活動の多くをコントロールすることができる立場にあり、日銀が市場をコントロールしようと思えば、銀行をコントロールするだけで十分なのだ。

 中央銀行制度というのは、銀行を通じてしか、通貨の調整をしないというシステムであり、これが経済を支配する力の源泉となっている。

 銀行による産業界のコントロールが、経済構造の変化で弱まるということになると、日銀が持つパワーもまた変化することになる。長い目で見れば、政府の経済政策にも大きな影響を与えることになるかもしれない。

コネがなくても大丈夫

 こうした動きは個人と個人の間でも同じことである。

 たまたま顕在化していないだけで、人は多くの才能を持っている。子育てひとつとっても、赤ちゃんのあやし方が天才的に上手い人は一定数存在するし、ビジネスの世界でも、プレゼンテーションが上手な人、セールストークが得意な人、デザインが上手な人など、様々な能力が溢れている。

 しかし、才能をお金に換えるためには、相当なビジネスインフラが必要であった。巨額なコストをカバーするためには、一定数以上の集客が必須であり、それに合致する体制ということになると、相応の資金力が求められる。

 これまでは、才能を生かそうと思った場合、資金を持っている人、豊富なコネを持っている人が圧倒的に有利であった。才能はあるが、資金やコネといったビジネスリソースに恵まれていない人よりも、才能はあまりないが、ビジネスリソースをたくさん持っている人のほうが世に出やすかったわけである。

 人にものを教えてお金を稼げる人がごく少数に限られていたのは、こうしたメカニズムによって、教えるという行為と権威、そしてお金が密接に結びついていたからである。

 だが、秩序の変化にともない、こうした力関係も変わってくる。

 ネットのインフラを使って、自身の持つノウハウをお金に換えるプチ起業家が、今後、急激な勢いで増えてくるだろう。ネット上で集客を行い、ネット上で集まる場所を探し、ネット上で事前決済をすれば、極めて安価に、個人レッスンのビジネスを構築することができる。

やらない言い訳が通用しない厳しい世界

 だが、この新しい平等な社会は、甘えを許さない厳しい世界でもある。今までは、仮に成果が出ていなくても、自分はチャンスに恵まれなかっただけだという言い訳ができた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

イスラエルがガザ空爆、26人死亡 その後停戦再開と

ワールド

パキスタンとアフガン、即時停戦に合意

ワールド

台湾国民党、新主席に鄭麗文氏 防衛費増額に反対
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 5
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 6
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 9
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中