最新記事

映画

いかれた『フィルス』の愛すべき世界

ジェームズ・マカヴォイ主演のぶっ飛び映画『フィルス』のジョン・S・ベアード監督と原作者アーヴィン・ウェルシュに聞く

2013年11月19日(火)16時20分
大橋 希

最低男 悪徳警官ブルースはどこまで堕ちていく? ©2013 Lithium Picture Limited

 主人公は、アル中でジャンキーでろくでなしのスコットランド人刑事ブルース・ロバートソン(ジェームズ・マカボイ)。クリスマスで街中が浮かれ始めた頃に発生した日本人留学生殺人事件の捜査で手柄をあげ、出世しようともくろむが......。

 日本公開中の『フィルス』はドラッグと酒とセックスまみれの人間ドラマ、ダークコメディ、サスペンスをごちゃ混ぜにしたぶっ飛び映画。でも、ダメ男ブルースが人知れず抱える苦悩に思わずほろりとさせられる。

 原作は『トレインスポッティング』で知られるアーヴィン・ウェルシュ(55)。脚本・監督は長編2作目となるジョン・S・ベアード(41)が務めた。ウェルシュとベアードに話を聞いた。

──『フィルス』は、アーヴィンが自分の小説の中でいちばん映画化を望んでいた作品だとか。どんなところが? 出版から15年たって映画化されるというタイミングについてはどう思う?

アーヴィン・ウェルシュ 本だと登場人物が何人もいて、いくつものテーマがあっていいんだと思うが、映画は中心となる人物がいて、一つのテーマで進んでいくことが多い。その点で『フィルス』は私のほかの小説より映画向きだと思っていた。1人の人間に焦点を当てて、彼が精神的に破綻していく旅路を描いているから。それにブルースは非常に複雑でクレイジーなキャラクターだから、いい脚本でいい役者がやったらすごく面白いことになるんじゃないかと思った。

 15年たってどうかといえば、最高だよ。この役者でこの脚本というのは今だから得られたもの。15年前なら、ジェームズもジョンもまだ「おむつ」をしていたからね(笑)。今までいろんな監督やいろんな脚本で映画化の提案があったが、今回がベストだと思う。

──かなり特異な原作だが、脚本を書くにあたって気を付けた点は?
 
ジョン・S・ベアード 僕はまずブルース・ロバートソンというキャラクターに引かれた。これまで読んだあらゆる小説の中で、とにかく最も強烈なキャラクターだと思う。まともじゃなくて刺激的、いろいろなものが詰まったとても魅力的な人物だ。アーヴィンの作品はどれもダークだけど、コメディやおかしなところがある。だから心掛けたのは、そのユーモアを大切にするということ。

 原作ではある2つの場面がすごくおかしかったので、時間をかけてそのシーンを撮った。でも編集段階でどうやってもうまく入らない。ブルースの旅路から逸脱してしまう。だからその場面は入れなかった。本を読んだり脚本を書いている時にいいと思っても、それが映画として最終的にいいかどうかは分からないということを学んだよ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英企業信頼感、1月は1年ぶり低水準 事業見通しは改

ビジネス

基調物価の2%上昇に向け、緩和的な金融環境を維持=

ワールド

米運輸長官、連邦航空局の改革表明 旅客機・ヘリ衝突

ビジネス

コマツの4ー12月期、営業益2.8%増 建機販売減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中