最新記事

映画

『トロン・レガシー』知られざる舞台裏

82年公開のCG映画『トロン』の続編を手がけたジョセフ・コジンスキー監督に製作の舞台裏や作品の見どころを聞いた

2010年12月15日(水)14時16分

未知の世界へ コンピュータの中にある別世界に入り込んだサム(左)は謎の女性クオラ(右)に出会うが ©Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 82年のSF映画『トロン』といえば、CGを駆使した画期的な映像で当時大きな話題を呼んだ。その続編『トロン:レガシー』が、12月17日から世界同時公開される。

 主人公の若者サム(ギャレット・ヘドランド)はある日、20年前に失踪した父ケビン(ジェフ・ブリッジス)から謎のメッセージを受け取る。かすかな希望を胸に、当時デジタル界のカリスマ的存在だった父のオフィスを調べていると突然強い光に包まれる。気づくとそこは、コンピュータ・システムの中の世界だった──。

 本作で映画監督デビューを果たしたジョセフ・コジンスキーは、ナイキやアップルの未来的テイストのコマーシャルなどで注目される映像作家。本誌・佐伯直美が話を聞いた。

               * * * *

──製作が決まる前の08年に、短いサンプル映像をアメリカのポップカルチャーの祭典「コミック・コン・インターナショナル」で披露したら大反響だったとか。

 あれが映画化を決定づけた。発表前は不安で仕方なかった。反応が悪ければプロジェクトはおしまいだからね。反応の大きさを本当に感じたのは発表の数日後。隠し撮りされた映像がネット上に流れ、あっという間にファンの間で話題になった。あの時ニーズがあると実感した。

──82年に発表された前作のコアなファンが多いのはプレッシャーだったか。

 前作はいろいろな意味で既成概念を打ち破った作品だった。コンピュータの中に別世界があるというコンセプトもそうだし、映像面でも数々の革新的な試みをした。だから今回も、今の時代の限界に挑む作品にしなければというプレッシャーはあった。

──ジェフ・ブリッジスは1人2役で、自分の若い頃にそっくりな「分身」クルーを演じているが、自然な映像で驚いた。

 あれはまず顔にたくさんのマーカーをつけた状態でジェフにクルーを演じてもらい、彼の表情や動きを録画する。このデータをもとに「デジタルな頭部」を作る。次にクルーの体だけを代役が演じる。クルーは若いし体がしまってるから。そしてこの体に先の頭部を合体させる。

 この技術を活用した最初の成功例は映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』だった。あの作品ではCGでブラッド・ピットを老いさせていったが、今回は逆。同じスタッフが特殊効果を手がけている。

──自分の顔でも試してみたか。

 遊び感覚で試せるようなものじゃないんだよ。ジェフの頭を作るだけで約1年かかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ首都に夜間攻撃、9人死亡・70人以上負傷

ワールド

米関税、インドGDPを最大0.5%押し下げる可能性

ビジネス

日産、米国でセダンEV2車種の開発計画を中止 需要

ビジネス

トランプ関税で「為替含め市場不安定」、早期見直しを
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「iPhone利用者」の割合が高い国…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中