最新記事

映画

ジュリア・ロバーツ、「自分探しの旅」に出る

2010年8月19日(木)18時04分
デーナ・スティーブンズ

 インドのパートで印象的なのは、瞑想仲間のリチャード(リチャード・ジェンキンズ)の存在だ。アルコール依存から立ち直るためにテキサスから来たリチャードには不思議な積極性があり、知り合ったばかりのリズに愛情あふれるニックネームをつけたりする。

 性格俳優のジェンキンズには、落ち着いた威厳がある。だが私は、2人の関係に漂う嘘っぽさを感じずにはいられなかった。リチャードというキャラクターは、現実を受け入れることと信念についての格言を発するためだけに存在させられたようにみえる。

 リチャードが自分のことを語るシーンも1カ所あり、ジェンキンズは観客の感情を巧みに操る堂々とした演技をみせている。リズとリチャードの互いへの信頼が新たなステージに達したことを示すシーンだが、私はこの瞬間、映画への信頼を失った。

バリ島の恋でみせた真実の感情

 瞑想を終えてバリ島に旅立ったリズは、年老いた祈祷師に弟子入りする。緑豊かなジャングルと好色な在住外国人に囲まれた日々を過ごすうちに、リズはブラジル人ビジネスマンのフェリペ(ハビエル・バルデム)と出会う。だが、過去の2つの恋愛の傷から立ち直っていないリズは、フェリペに口説かれてもしばらく応じようとしない。 

 いったん2人の恋が始まると、穏やかで慎重に進行していた物語は一気に破天荒な展開に転じる。フェリペがいくら魅力的だからといっても、またも身を焦がす恋にどっぷり浸かるのはリズにとってよくないのではないか、と映画は示唆しているようだ。

 リズは、ようやく手に入れた心の平穏を失うのが怖いとフェリペに語る。フェリペの熱烈な求愛に抵抗するリズの目に恐怖が浮かび上がるシーンは、この映画で唯一、真実の感情を伝えているように感じられた。

 とはいえ、イタリアで美味しい食事を堪能し、インドで精神のバランスを身につけたリズは結局、バリ島での「恋」も手に入れるのだが。

Slate.com特約)


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 10
    バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中