最新記事

メンタルヘルス

部下が適応障害? 過重労働・パワハラ・悪しき人間関係を調整するのは上司の仕事

2021年3月4日(木)17時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

あなたは、適応障害の部下を前にしたとき、この3つを自問してみる必要があります。そして、部下を適応障害から救うために、多忙を極める中ではあるにしろ、何かできることはないかと考えてみるべきです。

ここで一つ注意すべきは、外部要因の調整を一刻も早くしなければならないケースを見逃さないことです。もし、そうしなければ、あなたも会社も、法的な責任を問われかねません。それは、労働災害と認定されるケースです。

精神障害の労災認定要件は、次の3つです。

①認定基準の対象となる精神障害を発病していること
②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

精神障害の労災認定について、2000年には請求件数が212件、認定数36件でした。しかし、15年後の2015年には、それぞれ1515件、472件と急増しています。今後、さらに増加していくことが見込まれます。自己防衛という意味でも、外部要因の調整を軽く考えてはいけません。

①の認定基準の対象となる精神障害には気分障害が含まれ、適応障害はこれに当たります。②は、ストレス源としての外部要因の存在を6ヶ月以上放置してはいけないということです。

労災認定という視点から見たとき、次に挙げる状況が部下に起きたとき、あなたはすみやかに調整すべきです。

①月80時間以上の残業
②2週間(12日間)以上にわたる連続勤務
③達成困難なノルマ
④ひどい嫌がらせ、いじめ、暴行
⑤上司や同僚、部下によるパワーハラスメント
⑥セクシュアルハラスメント

これらは、労災認定を回避するためだけではなく、労災認定されかねないほどに劣悪な外部要因を取り除く義務があるという視点でとらえてください。

ちなみに、労災の認定は、あくまで個々の事案ごとに判断することになり、客観的な基準はありません。ただし、勤怠の時間だけは数字で判断できる部分なので、注意してください。万が一、労災認定の請求をされた際、月の残業時間だけは申し開きができません。あなたは上司として、厳格にこれを管理しておく必要があります。


もし、部下が適応障害になった
 ――部下と会社を守る方法』
 森下克也 著
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


もしかして、適応障害?
 ――会社で"壊れそう"と思ったら』
 森下克也 著
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中