部下が適応障害? 過重労働・パワハラ・悪しき人間関係を調整するのは上司の仕事
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<適応障害の外部要因(ストレス要因)の調整は、医師など第三者にはできないこと。「特別扱いはできない」などの言い訳は許されないと心療内科医の森下克也氏は言う。対処しなければ、法的な責任まで問われかねない>
適応障害とは、どういう病気なのか。部下が適応障害にかかってしまったとき、その兆候が見られたとき、上司は一体どう行動すればいいのか――。
「職場のうつ」と呼ばれることもある適応障害。約30年にわたってその治療に当たってきた心療内科医の森下克也氏は、『もしかして、適応障害?』(CCCメディアハウス)を当事者向けに上梓。そしてこのたび、その続編的な位置付けとなる『もし、部下が適応障害になったら』(CCCメディアハウス)を世に出した。
適応障害には、家族や友人など、当事者以外にも多くの人が関わっており、なかでも職場の上司の果たす役割が計り知れないほど大きいからだ。
具体的な事例も紹介しながら、分かりやすく書かれた『もし、部下が適応障害になったら』から、ここでは一部を抜粋し、3回に分けて掲載する(この記事は第3回)。
※抜粋の第1回:部下が適応障害? 親身に相談に乗り、仕事を減らしてあげるのが良い対応とは限らない
※抜粋の第2回:適応障害で多いパターンは、相当悪化してから、あわてて心療内科を受診すること
外部要因をいかに調整するか
第2章で述べたように、適応障害の外部要因とは、職場環境に生じている直接のストレス要因です。この外部要因をいかに調整すべきかは、組織内にいる上司としてのあなたが最も力を発揮できるところです。と同時に、医師など組織外の第三者が介入するのは困難な部分です。
適応障害の患者さんの全例に言えるのが、その調整がほぼされていないということです。過重労働、長時間勤務、パワーハラスメント、悪しき人間関係が軽減されることなく漫然と続いています。
なぜ調整が行き届かないかと上司に問うと、おそらく「忙しいから」「みんな我慢していること」「特別扱いはできない」「人員にゆとりがない」などと答えます。たしかに、その通りで、その答えに偽りはないでしょう。
しかし、本当に調整が不可能なのかというと、決してそうではないはずです。なぜなら、業務の遂行が困難になった患者さんに、「適応障害」の病名とともに「軽減勤務が望ましい」といった一筆を添えると、たいていの組織は調整に向けて重い腰を上げるからです。
外部要因の調整が実行されない理由として、次の項目が挙げられます。
①部下の状態への認識が不足している
②調整のために割く労力の余裕がない
③そもそも調整しようという意識がない
ほかにも挙げればきりがありませんが、大枠としてはこの3つだろうと思われます。そして、先の問いへの答えとして聞こえてきた数々の上司の言葉は、これらを覆い隠す言い訳にすぎません。