部下が適応障害? 親身に相談に乗り、仕事を減らしてあげるのが良い対応とは限らない
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<もしも部下が適応障害になったら、どう接すればいいのか。上司の果たす役割は非常に大きいが、まずい対応を取ってしまう人は多い。心療内科医の森下克也氏は、まずい対応には4種類あると言う>
適応障害は、もはや珍しい病気ではない。あなたの会社や身の回りにも、心を病んでしまった人が1人や2人、いるのではないだろうか。
適応障害とは、外部環境にストレスとなる原因があり、それに長期間さらされることによって起こる、心と身体の病気のこと。「職場のうつ」と呼ばれることもある。
問題は、薬を服用しただけでは治らないことだ。それなのに、日本の精神医療はこの病気に十分に対応できていないと、心療内科医として、約30年にわたって適応障害の治療に当たってきた森下克也氏は言う。
「職場でのストレスによって心と身体が傷つき、病院にかかってはみたものの、単に薬を処方されるだけだったり、診断書をもらって休職に入ったはいいが、どう過ごすかについての指導はされないまま、といったことが日常的に起きています」
そのため森下氏は、『もしかして、適応障害?』(CCCメディアハウス)を当事者向けに上梓。そしてこのたび、その続編的な位置付けとなる『もし、部下が適応障害になったら』(CCCメディアハウス)を世に出した。
適応障害には、家族や友人など、当事者以外にも多くの人が関わっており、なかでも職場の上司の果たす役割が計り知れないほど大きいからだ。
「上司は部下の人生の一端を担っています」と、森下氏は言う。
「決して、上司に隷属を強いられる存在でもなければ、組織の部品でもありません。人間としての幸せを求め、そこにいるのです。その期待に応える義務が、上司にはあります。メンタルヘルスへの安全配慮義務が、法律で規定されている所以です」
適応障害とは、どういう病気なのか。部下が適応障害にかかってしまったとき、その兆候が見られたとき、上司は一体どう行動すればいいのか――。
具体的な事例も紹介しながら、分かりやすく書かれた『もし、部下が適応障害になったら』から、ここでは一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。
上司がつい取りがちな、まずい対応
では、わが国の上司と言われる人たちは、部下のメンタルヘルス不全に対して、実際、どのように対応しているのでしょうか。
最近、あなたの周囲に、どうも様子のおかしい部下がいたとします。顔色が悪く、ミスを連発し、すっかり笑顔がなくなって、飲みに誘っても断ります。それでも勤怠に問題はなく、忙しい中、むしろ残業は増えています。
上司であるあなたは、「疲れているようだな」と気にして、声をかけます。でも、「大丈夫です」という答えしか返ってきません。あなたは気になっていますが、何の対策を講じることもなく、時間ばかりが過ぎていきます。