暴露療法は逆効果、不安を自分で断ち切るドイツ発祥の革新的メソッドとは?
脳のプログラムを書き換える「テンセンテンス法」
だが反対に、いつも良い気分でいられることを考えていれば、ポジティブな回路が太くなる。意識的にポジティブな思考回路を作り、それを強化することで、ポジティブな思考を手に入れられるということだ。
著者のカウンセリングが高い効果を出しているのも、ここに秘密がある。つらい経験を思い出すことでそれを乗り越える暴露療法など従来の手法では、むしろ新たな不安の回路を作り出すだけで逆効果であり、やればやるほど不安が強化されてしまうという。
「本当に効果のあるセラピーとは、ポジティブな感情を保存するシナプス(ニューロン同士の接合部)をできるだけ早くできるだけ多く作るものでなければなりません」と著者は言う。
ポジティブな脳の回路を作る具体的な方法として本書に紹介されているのが、「テンセンテンス法」だ。「あなたにとって本当に素晴らしい人生とはどういうものですか?」という問いに対して10の文章で回答をすることで、脳のプログラムを新たに書き換える。
その際、「否定を含まない」「すべてをポジティブに」「現在形で」「具体的に」「自力で到達できることを」という5つのルールがある。例えば、「新しい仕事が気に入っていて仲間といるのが楽しい」「カッコいい車を運転しているので、毎日気分がいい」など。
このような10の文章を書き出したら、より早く脳に新たな回路を作るために、ひとつひとつの文章を、五感を使って感じる。つまり、「見る」「聞く」「感じる」「匂いを嗅ぐ」「味わう」に意識を集中させるのだ。これによって、さらに効果的に脳をプログラムできるという。
昔ながらのセラピストが驚く、6~12週間で不安を乗り越える方法
現に大きな不安を抱えている場合には、すぐにポジティブな回答を思いつかないかもしれない。だが、「およそ20分、毎日レッスンすれば、3週間後には今よりもはるかに気分が良く」なると著者は述べている。
そのほか、本書では即効性のあるテクニックも数多く紹介されており、なかにはミッキーマウスなどのキャラクターを用いるユニークなものもある。取り組みやすいものから試すだけでも、数日もすれば明らかに不安が小さくなり、心身に良い影響を及ぼしていることに気づくだろう。
実際のところ、ほとんどの不安は長くても6週間から12週間のうちに完全に乗り越えることができると著者は説明する。それは「昔ながらの療法を用いているセラピストにとっては、今日なお不可能に思えるほどの速さ」だという。
あなたは憧れの人生を生きるために健康になるのではありません。憧れの人生に向かって一歩を踏み出せば、健康になれるのです!(202ページ)
不安に別れを告げる日。それは、自分自身で招くことができる。先行きの見えない今だからこそ、不安を克服する術を知っておくことは、大いに助けになるに違いない。
『敏感すぎるあなたへ――
緊張、不安、パニックは自分で断ち切れる』
クラウス・ベルンハルト 著
平野卿子 訳
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