暴露療法は逆効果、不安を自分で断ち切るドイツ発祥の革新的メソッドとは?
にもかかわらず、その「心の声」に逆らっていると、やがて「心の叫び」となって強く訴えてくる。それでも無視し続けると、無意識はついに強硬手段に出る。神経伝達物質を使って、激しい身体反応を引き起こすのだ。
それは、無意識からの「警告」だ。自分が抱えている問題が、今や心身の不調となって姿を現した状態である。言い換えれば、それ以上悪い方向へ進まないように押し止め、その問題について一度立ち止まってよく考えろ、と無意識が仕向けてくれているわけだ。
たとえパニック発作を起こしても「あなたは病気ではない」
無意識からの警告のうち、精神的なもの(=心の不調)には、記憶力や集中力が突然落ちる、やる気がなくなる、無力感が生じる、わけもなく悲しくなる、といったものがある。これらを放置し続けて最終段階まで来ると、パニック発作という最も強い警告となって現れる。
あるいは、胃腸の不調や皮膚炎、無意識の筋肉の痙攣、また視力が突然落ちる、絶えず尿意を催すといった肉体的な警告(=体の不調)となって現れることもある。椎間板ヘルニアやヘルペスなども、精神的な原因から起きることが珍しくないという。
不安が募ったことで心身に不調をきたすと、そのことにさらに不安を覚えてしまうかもしれない。うつなどの「病気」なのではないかと心配になる人もいるだろうし、薬を飲んでも胃痛が治まらず、「ひょっとして......」と疑わずにはいられないかもしれない。
だが、「あなたは病気ではない」と著者は断言する。たとえパニック発作を起こしても、多くの場合、心身はいたって健康なのだ。パニック発作はむしろ、無意識からの「思いやり」と心得るべきだと著者は助言している。
そうは言っても、不安に端を発する心身の不調は好ましいものではないし、不安にならずに済めば、それに越したことはない。そのためには、不安を引き起こす外的要因を取り除くことも重要だが、同時に「ポジティブな脳の回路」を作ることを著者は説く。
「不安」が無意識からのメッセージということは、そこには脳が大きく関わっている。よく知られているように、脳の回路は、使えば使うほど活発になる。つまり、いつもネガティブなことばかり考えていると、脳内には、不安へとつながる「高速道路」が出来上がるのだ。