加齢を味方につけたアスリートに学ぶ、トレーニング法・疲労回復法
印象的なセンテンスを対訳で読む
最後に、印象に残るセンテンスを紹介しよう。以下は、『アスリートは歳を取るほど強くなる』の原書と邦訳からそれぞれ抜粋した。
●"The best players in the world work the hardest, but they also have the most fun."
(「世界のベストプレイヤーたちは、一番ハードに働くが、同時に、一番楽しんでもいるんだ」)
――スポーツ心理学者ジム・アフレモウの言葉。上記のロジャー・フェデラーにも通ずる。また、トム・ブレイディも、5度目のスーパーボウルに勝った後にこう言った――「フットボールをプレーすること以外で好きなことは、フットボールをプレーするために準備をすることかな」。
●"The fastest player on the field isn't the person with the fastest body, but with the fastest mind,"Galanis says.
(「フィールドで一番速いプレイヤーは、最速の足を持っている者ではなく、最速の精神を持っている者だ」と、ガラニスは言う。)
――米国女子サッカー選手カーリー・ロイドのコーチをしていたガラニスの言葉。「遅さ」を追求していたということにつながる。若い選手は、反射神経は速いが、判断速度が速いことは滅多にない。サッカーでは、起こっていることを効率よく判断する速度が必要で、それは経験を積んだプレイヤーのほうが勝るということ。
●"Your peak ends where you want it to end. There is no peak. There is no peak," Galanis says, repeating that last remark slowly for emphasis. "There is no peak and there is no talent. We make talent. No one is born hitting three-pointers on a basketball court, or bending balls in the top corner. Talent is made."
(「ピークは、自分が終わりにしたいと思ったところで終わる。だからピークは存在しない。ピークというのはないんだよ」と、ガラニスは言った。強調するかのように、2度目はゆっくりと繰り返した。「ピークは存在しないし、才能も存在しない。才能は作るものだ。誰も、生まれながらにしてバスケットボール・コートでスリーポイント・シュートを打ったり、蹴ったボールのコースを曲げてコーナーの上隅に入れたりできるわけではない。才能は作られるんだ」)
――これも、ガラニスの言葉。カーリー・ロイドが、速さではなく、早い判断を武器に活躍し、FIFAのプレイヤー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた後、著者がガラニスに「彼女はピークに達したのか?」と尋ねた時の返事。ロイドはまだ進化し続けるつもりで、ガラニスは「次の目標は、これまでで最高のプレイヤーになることだよ」と言った。
本書の原題は『Play On』。東京オリンピック・パラリンピックの延期も決まり、スポーツを愛する人たちにとって、今は我慢の時かもしれない。だが新型コロナウイルスの猛威もいつかは収まる。そうなったときには、アスリートも、アスリートでない普通の私たちも、さあ、始めよう。さあ、続けよう。私たちは、歳を取るほど強くなれるのだから。
『アスリートは歳を取るほど強くなる
――パフォーマンスのピークに関する最新科学』
ジェフ・ベルコビッチ 著
船越隆子 訳
草思社
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トランネット
出版翻訳専門の翻訳会社。2000年設立。年間150~200タイトルの書籍を翻訳する。多くの国内出版社の協力のもと、翻訳者に広く出版翻訳のチャンスを提供するための出版翻訳オーディションを開催。出版社・編集者には、海外出版社・エージェントとのネットワークを活かした翻訳出版企画、および実力ある翻訳者を紹介する。近年は日本の書籍を海外で出版するためのサポートサービスにも力を入れている。
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