最新記事

キャリア

87%の人が「仕事が嫌い」 だから私は「働き方実験」を始めた

2017年8月10日(木)14時42分
アンディ・スワン ※編集・企画:情報工場

2人の人間が同じようなスキルを持っていて、同じ仕事を似たような環境でしているのに、両者の報酬には著しい差があるといった話をよく聞く。そこで私は、あるフリーランスの仕事を依頼されて日給をどのくらい欲しいかと聞かれたときに、「(他の人と比較した基準ではなく)純粋に私がどれくらいの価値を生み出すかを基準に、金額を見積もってほしい」とお願いした。

その後、何度かこの方針で臨んだのだが、うまくいったのは雇用主との間に良好な関係が築けた職場だけだった。会社が私を公平に扱ってくれると信じられ、納得のいく報酬が与えられる場合のみ、私は全力で仕事に取り組んだ。そのほうがずっと安心して働けるし、労働の供給者と雇用主のマッチングもうまくいく。しかしながら、いまだ大多数のビジネスでそのような関係が築けていないのが現状だ。

意欲を失う主な原因は「つながり」不足

実験では、それまでトライしてこなかったような新しいタイプの仕事に挑戦したときの気づきが大きかった。牧場での乳搾り、芸術鑑賞のガイド、英国のテレビドラマ『ダウントン・アビー』のエキストラなど。純粋に実験のために行った仕事だったが、これらを通してある重要なファクターが明らかになった。

それは「つながり」である。世界の87%の労働者が意欲を失っている主な原因は「つながり」の不足なのだ。人との、仕事との、また組織との「つながり」だ。「つながり」が深まれば、生産性も高まる。シンプルな論理だ。

あるバーベキューパーティーで、プロジェクト全体に影響を与える出会いがあった。10年間同じ仕事をしているある人物に会ったのだが、彼は自分の仕事のすべてを毛嫌いしていた。私に話してくれたところによると、彼が任されていた仕事は膨大なペーパーワークで、それらは彼の人間としてのスキルや潜在能力を生かせるものではなかった。

彼は、仕事と適切な「つながり」を持つための個人的な資質を、内に備えてはいたのだ。それを職場で生かせられれば、彼はもっとダイレクトに組織に貢献できたはずだった。彼自身ももっと仕事に満足できただろうし、職場を素晴らしい場所だと周囲に言いふらすだろう。

1年間のプロジェクトの終わり頃に、彼に再会した。私は彼に、自らの行く道は自分で拓けること、そのためにはリスクを恐れないことなどを伝えた。結局のところ私たちは、収入が保証されているという理由だけで、意にそぐわない仕事やクライアントとの付き合いを続けている。ポジティブな変化を起こすには、変えるための行動を起こす覚悟が必要だ。

【参考記事】1人の時間が必要な内向型、人と会って元気になる外向型

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

BRICS外相会合、トランプ関税の対応協議 共同声

ワールド

ウクライナ、米と可能な限り早期の鉱物協定締結望む=

ワールド

英、EUと関係再構築へ 価値観共有を強調=草案文書

ビジネス

ECB、中立金利以下への利下げも 関税で物価下押し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中