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ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「一帯一路」の真実

2025年1月29日(水)19時45分
梶谷 懐(神戸大学大学院経済学研究科教授)、高口康太(ジャーナリスト、千葉大学客員教授)

金融システムの改革によってその脆弱性を減らすこと、為替レートにできるだけ柔軟性を持たせること、国境を越えた資本移動の規模を縮小すること、さらに米国債の保有比率を減らし、債務のコスト構造を見直すことで、海外資産・負債の構造を調整し、外貨準備の規模を縮小していくことを、余は提言している。

また、前述のホーンらも、ウクライナ戦争が中国の対外融資に大きな障害をもたらすと指摘している。中国の政府系金融機関がロシアとウクライナ、およびベラルーシに対して行っている融資額は大きい。

中国の国有銀行は2000年以降、エネルギー関連の国有企業を中心に、累積で1250億ドル以上をロシアに融資してきた。ウクライナに対しても農業とインフラプロジェクトを中心に70億ドルほど、さらにベラルーシに対しても80億ドルほど融資している。

この3カ国への融資を合計すると、過去20年間の中国の海外向け融資の20%近くを占めるという。戦争のようなアクシデントがおきれば、これだけの融資が一気に回収できなくなるリスクがあると、ウクライナ戦争によって現実を突きつけられたのだった。

さらに中国の高齢化も貯蓄率低下の要因となる。若い間は貯蓄し、年をとるとそれを取り崩すというサイクルは世界中どの国でも共通している。みなが消費せずに貯蓄するので投資マネーが過剰になる、という図式が従来あったが、高齢化によってそれが崩れつつあるわけだ。

かくして、中国の金を貸して中国の輸出を増やすという初期一帯一路の図式は崩れた。では、後期の一帯一路、すなわち金欠となった一帯一路はどのような狙いを持つのだろうか。

*続きはこちら→今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望している理由

参考文献:
Dreher, Axel, Andreas Fuchs, Bradley Parks, Austin Strange and Michael J. Tierney. 2021. "Aid, China, and Growth: Evidence from a New Global Development Finance Dataset." American Economic Journal: Economic Policy 13(2): 135─74.

『ピークアウトする中国――「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』
ピークアウトする中国――「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界
 梶谷 懐、高口康太 著
 文春新書

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[筆者]
梶谷 懐(かじたに・かい)
1970年、大阪府生まれ、神戸大学大学院経済学研究科教授。神戸大学経済学部卒業後、中国人民大学に留学(財政金融学院)、2001年に神戸大学大学院法学研究科博士課程修了(経済学)、神戸学院大学経済学部準教授などを経て、2014年より現職。著書に『中国籍済講義』(中公新書)など。

高口康太(たかぐち・こうた)
1976年、千集県生まれ、ジャーナリスト。千葉大学客員教授。千重大学人文社会科学研究科博士課程単位取得退学。中国経済、中国企業、在日中国人社会を中心に各種メディアに寄稿。著書に『現代中国経営者列伝』(星海社新書)、 『中国「コロナ封じ」の虚実』(中公新書ラクレ)など。

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