最新記事
日本企業

「え、なぜ?」南米から謎の大量注文...トレハロース製造元が突き止めた驚きの「糖」活用法

2024年12月19日(木)17時05分
一ノ瀬 伸
南米の大豆栽培

あのトレハロースが農業に役立っていた Fotokostic-shutterstock

<ナガセヴィータ(旧・林原)が世界で初めて量産化に成功し、食品や医薬品、化粧品を中心に利用されている糖の一種、トレハロース。遠く離れた南米で、同社が知らぬうちに意外な使われ方をし、持続可能な農業に貢献していた>

15年前、アルゼンチンの企業から化粧品代理店を通じて「トレハロース」の大量注文が入った。

「ん? なんだろう」。当時、林原(現・ナガセヴィータ、本社・岡山県岡山市)のアメリカ駐在員だった東山隆信さんは、違和感を覚えたという――。

トレハロースは、素材メーカーである同社が1994年に世界で初めて大量生産に成功した自然由来の糖の一種。でんぷんの老化抑制やタンパク質の安定化など多様な機能を持つことから、食品や医薬品、化粧品を中心に国内外で広く使われている。

海外からの受注は当時も珍しくなかったが、東山さんには引っかかる点があり調べてみることにした。

「地球の裏側からの注文ですから、日本からの輸送費も含めるとけっこう大きな金額になりますし、化粧品に使うには量が多すぎる。いったいどんな使い道なのだろうと疑問に思いました。ブラジルにいるスタッフに調査してもらうと、どうやら農業用途だと分かったんです」

トレハロースが農業に? そのブラジルのスタッフが謎を解明するため現地の企業を訪れると、トレハロースが南米で盛んな大豆栽培に活用されていたのである。

【関連記事】日本の技術で世界の干ばつ解決へ...ナガセヴィータの研究者に聞く「糖」の意外な活用法|PR

広大な畑、化学農薬・肥料...「このままではいけない」

アルゼンチンもブラジルも農業大国だが、南米の土壌はもともと痩せていて、日本なら自然に存在する根粒菌が存在しない。根粒菌には大豆の生育に欠かせない窒素を供給する役割があり、そのため南米では、当初は代わりに化学肥料が、後にバイオ肥料として根粒菌製剤が大豆栽培に利用され始めていた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者約700人に、タイの崩壊ビルで

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 5
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 6
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中