最新記事
2024米大統領戦

米経済に垂れ込める米大統領選の暗雲...トランプ再選で、1930年代以降で最も危険な時代が到来か

ISSUES 2024: THE UNITED STATES

2023年12月27日(水)13時30分
ジョセフ・スティグリッツ(米コロンビア大学教授〔経済学〕)

共和党にも政策目標はある。だが、その逆進的な税制や労働者の利益に反する政策、大学や科学に対する攻撃、女性の権利の原始的な逆転に、多くの有権者が反対している。ところが、共和党は選挙制度を自分たちに有利なものにし、バイデンを巧みに年寄り扱いしている。

ソフトランディングに失敗か

さらに、一部の民主党議員は共和党と呼応して、インフレはパンデミックからの復興におけるバイデン政権の財政支出のせいだと声高に主張している。しかし、それらの支出は、パンデミック不況の先が見えない不確実性の最中に行われたものだ。

就任直後の政権としては、やらないより、やりすぎて失敗するほうが賢明だった。実際、結果として必要な量に極めて近い景気刺激策を実施した。データを注意深く検証すると、パンデミック後のインフレの主な要因は過剰な総需要ではなく、パンデミックに関連した供給不足と需要のシフトだった(しかも、これらは22年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻によって悪化した)。

こうした立場を支持してきた私たちは、インフレは抑制され、やがて低下し始めるだろうと考えた。その時期は誰も正確に予測できなかったが、実際にそうなった。しかし残念ながら、中央銀行はインフレの要因を過剰需要と見誤り、金利を急激かつ大々的に引き上げた。

それでもこれら2つの誤りが相殺されるという点で、アメリカは幸運だ。財政政策は予想以上に堅調で、インフレ抑制法は予想の3倍の支出を引き出すとみられるが、FRB(米連邦準備理事会)の過剰な金融引き締めがその効果を相殺し、ソフトランディングにつながっている。

今後はアメリカのエネルギー自給率を考えると、原油価格の高騰は、主に消費者から石油生産者への利益の再分配に寄与するだろう。この逆進的な結果は、石油会社の超過利潤に課税する「棚ぼた税」によって逆転させることができる。

バイデンはそうした法案を議会で通過させることができなくても、明確な支持を表明すれば、政治的に追い風になる。消費者はバイデンが自分たちのために闘い、石油会社や彼らが選挙資金を提供する共和党に立ち向かっていると考えるだろう。ただし、彼はパンデミックの最中にも、この選択肢に尻込みしたのだが。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中