大賀 「知の貯金箱」への社員の反応や利用状況はいかがですか。
鈴木 2022年の利用状況を調べると、社員50人のうち7割強が制度を利用して、購入した本は合計3225冊。書籍費は400万円を超えました。1冊買った人もいれば80冊買った人もいる。社員一人にすると月額平均で9500円程度です。
一番本を読んでほしいのは20代の社員です。いかにはやくロケットスタートを切ってもらうか。ただ、仮に年収が400万円台で、おこづかいが月に3万円程度とすると、1冊2000円のビジネス書を買うのはなかなか難しい選択です。そんなとき、会社が書籍代を出せば、お金がないことを理由にして社員が「本からの学び」の機会を失ってしまうのを防げます。
成長のきっかけもスピードも人それぞれ。成長のタイミングは「気づき」があったときなので、興味を持ったら気軽に本を買ってほしい、と社員に伝えています。
大賀 自ら興味をもった本だと吸収度が違ってきますよね。フライヤーも、要約を通じて少しでも興味を広げてほしいという願いを込めたサービスです。たとえば、一冊を読み通すことが前提だと、理解できるかどうかや読む時間をつくれるかが不安になり、読書のハードルが高くなってしまう。ですが、まずは本の要約を入り口にしてもらえれば、何かしら知識や知恵が得られる。そのなかで自分に合いそうな本があれば、自然とその本自体も読みたくなります。
学んだことがこれまでに得た知識や経験とつながっていく瞬間は、実にワクワクする瞬間です。そうした瞬間を味わうためにも、興味の足がかりは多ければ多いほうがいいと考えています。
鈴木 たしかに、要約だと「タイパ(タイムパフォーマンス)」がいいから、今の時代、特に若い方には支持されると思います。
大賀 フライヤーは時間対効果が高いと「タイパ」の文脈で紹介いただくことが多いのですが、実は、使っていくとますます本の多様な知にふれたくなり、利用時間が増えていくサービスでもあります。豊かな時間が増えることは本質的にタイパがよいと考えていて、今後も「より豊かな読書の道しるべ」をめざしたいと思っています。