社員の「尖り」が見える...不動産業界のパイオニアが、社員の読む本を「全額負担」して得たもの
大賀 社会問題に根差した個性のある「住まいのあり方」を提供しているのですね。御社の社員の方々の雰囲気や特徴はどのようなものですか?
鈴木 個性豊かな人が多いですね。中には、バンド活動をしていて「音楽と住宅を両立できるデベロッパー」ということに惹かれて応募してきた社員や、アメリカで大規模農業に携わってきた人もいます。最近では、ミュージションの事業に共感して入ってきた音大卒の社員も増えてきました。
大賀 鈴木さんが人材育成で大事にしている点もお聞きしたいです。
鈴木 社員にはどんどん新しい挑戦をしてほしいと考えています。今の主力商品は、数多く失敗をしてきたなかでの生き残りなんです。マーケットは需給バランスが決まっているので、トライアンドエラーをしない限り、いずれ飽和点に達してしまう。飽和する前に新たな取り組みを始めないといけないし、そのためにはもっと失敗が必要になります。
事業の安定期に入社する社員からすると、「安心して売れる商品があるし、先輩たちに教わった通りにがんばろう」と思うかもしれません。でも、こうした発想は衰退のはじまりです。挑戦して失敗しても、学びを得られれば、それは会社の未来につながる投資になります。
お金を理由に、「本からの学び」の機会を失ってほしくなかった
大賀 御社では、社員が読みたい本の購入費用を会社が全額負担する「知の貯金箱」という制度を16年間継続されています。この制度をつくった背景にある想いを聞かせてください。
鈴木 若いうちに、書籍にかけるお金を気にせず、読書によって自分自身の興味が広がる経験をしてほしいという願いがありました。私自身は社会人になるまでほとんど本を読んでいませんでした。読書遍歴のはじまりは20代後半のとき。経営学者ドラッカーの対談番組に引き込まれたのを機に、『マネジメント【エッセンシャル版】』や『チェンジ・リーダーの条件』などを読みはじめたらドハマりした。それからドラッカーの著書を制覇していきました。
読書は、興味のあるところに杭を打つ行為です。「これぞ」という一冊に出合ったら、その背景にある本や著者を掘り下げていくと、興味の対象が広がっていきます。あくまで最初の杭を打つことが重要なので、課題図書や推薦図書という形でジャンルを絞らないほうがいいと思いました。出発点は歴史小説などでもいいし、漫画も否定しません。そこから興味が広がればいい。
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