「能力の差」はもう重要ではない...AIが進化した今、社会と乖離してしまった「教育」はどうあるべきか?
大賀:少し突飛かもしれませんが、『冒険の書』を読んだとき、社会の本質的な課題を提示するという点で、『資本論』と似ているなと感じました。マルクスは、資本家と労働者の間には構造上搾取が生まれる、つまり資本主義は不幸な人を大量につくる仕組みではないかと投げかけて、その答えを読者に考えさせている。『冒険の書』も、AIの進化による近未来を見せて問いを投げかけつつ、あとは読者の手にゆだねているように思います。
『資本論(1)』
著者:カール・マルクス
出版社:大月書店
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これからの時代は、好きを爆発させている会社が強い
大賀:これからの時代において、私たちは何をどう学んでいくべきだと思いますか。
孫:「親鸞として話すGPT-4」のようにお答えすると(笑)、学ばなくていいんです。「どう学んでいくべきか」と聞くときの「学び」は、「遊び」と分離されてしまっている。
普段僕らはお金を稼ぐために、面白くない仕事に人生の大半を費やし、将来に不安を感じながら生きています。その厳しい実力主義が学校にも伝わり、「学び」から「遊び」が取り除かれていった。でも、遊びと学びは本来、シームレスにつながっているもの。何より、遊びってダラダラするだけじゃない、もっと広い概念です。
大賀:たしかに私自身は、役に立つからではなく、「好きだから学ぶ」という発想でいます。知らない世界を知るのが純粋に楽しい。「学ぶ=遊ぶ」という感覚ですね。
孫:大賀さんの場合は、自身の好きなことが自然と価値を生んでいますよね。これからの時代は、「つらいけど儲けるためにやっている」というビジネスはAIが代替していく。働く人たちが面白がってやり続けていると、そこに共感した顧客が集まってきて、それが企業の優位性につながります。目先の売上を少し増やすためにつまらない仕事をするより、面白いプロダクトやサービスを追究して中長期的にバリューを出すほうが、経営戦略としても正しいんじゃないですかね。
大賀:なるほど、好きを爆発させているような会社が強いのですね。このお話を聞いて、泰蔵さんが起業家やアスリート、アーティストといった道を、「職業」ではなく「生き方」として捉えているのが印象深かったのを思い出しました。
孫:サーファーって海が荒れているときのほうが、すごい波に乗れると心躍る。起業家も同様に、起業家であることを「職業」として捉えるなら「なるべく荒波を避けたい、むしろ凪の海がいい」と思うかもしれない。でも、起業家を「生き方」と捉えるなら、逆境のほうがむしろワクワクして挑戦を楽しめると思うんです。
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