「能力の差」はもう重要ではない...AIが進化した今、社会と乖離してしまった「教育」はどうあるべきか?
ChatGPTはメリトクラシーを解放する「最終兵器」か?
大賀:AIの進化で、学びや仕事のあり方が問い直されていると捉えています。OpenAIによるChatGPT Plusがリリースされたとき、すぐに課金して、1週間ほどアイデア出しなどに使ってみました。すると想像以上のアウトプットが出てきた。
私はこれまでAIの仕組みを勉強してきたので、AIにできることがそこまで凄まじいものではないと理解しています。ただ、ChatGPT Plusに搭載されたGPT-4の進化は今後も止まらない。そうした少し先の未来が見えている人たちはみなどこか、人間にできる貢献とは何だろうかと、将来を憂えているように見えます。
孫:大規模言語モデルの進化は、これまでのAIの進化とは質的に違う、非連続的なものという印象がありますね。ChatGPTは、2022年11月にリリースされて、たった1か月で1億人ユーザーを獲得するという史上初の記録を打ち立てた。しかも強化学習により、1億人のフィードバックがどんどん反映され、開発者すら予想しきれないフェーズに突入している。ChatGPTが提示するのは、デジタル上の言語データをもとに「確率的に次はこんな内容がくる」という、いわば人類全体の平均的な言葉の使い方。それが、その道の専門家でも唸るほどのアウトプットなので、「はたして人間は思考しているのか?」という問いを突きつけられたわけです。自分ならではの意思や価値もパターン認識にすぎないのではないか、と。
大賀:未来について考えている人たちが悲観的になるのは、そうした理由があるからですね。
孫:そう、自分の好きなことですらパターン認識かもしれない。だからこそ、「自分が好きなことって何?」という問いに向き合うことがますます大事になると思います。
好きなことだけしていると食べていけない、堕落してしまう。こうした恐れを生み出す背景には資本主義があります。資本主義が生み出す労働者社会の負の側面ですね。でも、好きなことで生計をたてられないのは、ブレーキを踏みながら恐る恐るやっているから。突き抜けてみたら、むしろ資本主義が後押ししてくれる。だから僕は資本主義を否定してなくて、活かし方次第という考えです。資本主義の制度のもとでも、好きを追究していけると思います。