メールも電話も4時間遮断で生産性向上 週休3日制の実験進む英国
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英国をはじめとする西側諸国は今、生産性伸び率の鈍化に悩んでいる。そうした中、生産性を向上させるため週4日勤務に移行する「実験」に、多くの企業が取り組んでいる。写真はスキンケアメーカー、ファイブ・スクィレルズの生産責任者、リリー・エリス氏。英ホーブで4月撮影(2023年 ロイター/Anna Gordon)
英国の小規模なスキンケアメーカー、ファイブ・スクィレルズでは、従業員と科学者が黙々とコンピューター作業やフェイスクリームの調合に取り組んでいた。聞こえるのは機械が立てる低音だけ。金曜日を休んでも1週間分の給与がもらえるよう、集中して働き生産性を高める「ディープ・ワーク・タイム」の最中だ。
会社オーナーのギャリー・コンロイ氏によると、同社は昨年6月に週休3日に切り替えるとともに、毎日4時間にわたって電子メールも電話も無視してインスタント・メッセージもオフにするこの時間を導入して以来、従業員15人が目標以上の成果を挙げてきた。
英国をはじめとする西側諸国は今、生産性伸び率の鈍化に悩んでいる。そうした中、生産性を向上させるため週4日勤務に移行する「実験」に、多くの企業が取り組んでいる。
英国は1970年代から世界金融危機前まで、生産性が年平均2%強の伸びを続け、生活水準の着実な向上を支えてきた。
しかし2010年から19年にかけての生産性伸び率は平均0.75%。イングランド銀行(中央銀行)は、今後数年間も低い伸びが続くと予想している。その一因は、英国の欧州連合(EU)離脱以来増えたお役所仕事だ。
週5日分の仕事量を4日に詰め込めば、単純計算で2000年代半ばまでの10年分の生産性向上に相当する。従業員にとっても幸せかもしれない。
ファイブ・スクィレルズの生産責任者、リリー・エリス氏(21)は、「金曜を確実に休むため、全員が月曜から木曜までしゃかりきに働いている。そのエネルギーを持続するのも本当に簡単だ」と語る。
設備投資
英国では昨年、主に従業員25人以下の企業61社が世界最大の週4日勤務実験、「4デイズ・キャンペーン」に参加。うち56社が結果に満足してこの勤務体系を続けている。ファイブ・スクィレルズはその1つだ。
実験を主催した組織などはロイターに、今年6月12日から新たな実験を予定しており、数百社から問い合わせがあったと明かした。
英国の生産性伸び率低下の一因は、設備投資の低迷だ。キャンペーン参加企業からは、週4日勤務への移行をきっかけに企業が設備投資や職業訓練への支出を増やせば、生産性の向上に役立つかもしれないとの声が聞かれた。
実際、ファイブ・スクィレルズも設備投資によって生産性を上げている。