メールも電話も4時間遮断で生産性向上 週休3日制の実験進む英国
大企業
オックスフォード大学の経済学教授、ジャンエマニュエル・ドゥ・ヌーブ氏は、大半の企業では、週4日勤務移行によって20%の生産性伸び率を目指すより、10%を目指す方が現実的かもしれないと言う。とはいえ、メンタルヘルス問題を抱える労働者が多い現在、勤務日数を減らす取り組みは倫理的な意味があると教授は考えている。
小規模企業に比べ、大企業は週4日勤務に懐疑的だ。しかしコロナ禍で在宅勤務が増えたことや、昨年の実験を踏まえ、大企業経営者も新たな働き方に前向きになっている。
例えば英食品・日用品大手ユニリーバはニュージーランドの従業員80人を対象に、週4日勤務実験を1年半にわたって実施。その後オーストラリアでも実験を展開するようになった。
英国以外の国も、勤務時間を減らす試みに乗り出している。スペインは、今後2年間で勤務時間を少なくとも10%減らしつつ給与を維持する実験のため、小規模製造企業に総額1000万ユーロ(約14億8000万円)を補助している。
人材確保にも有利に
英国は深刻な人手不足に見舞われており、一般に大企業の方が人材獲得で有利な立場にある。しかし一部の専門家は、週4日勤務によってこの状況を覆せる可能性があるとみている。
ボストン・コンサルティング・グループのシニアパートナー、ニック・サウス氏は、従業員に一体感がある小規模企業の方が新たな勤務体系に移行しやすく、それが人材獲得にも有利に働くかもしれないと言う。
金融企業ステラー・アセット・マネジメントのダリル・ハイン最高執行責任者(COO)は、30人の新規人材を採用した際、自社の週4日勤務体制が大いに物を言ったと語る。ファイブ・スクィレルズのコンロイ氏も、多国籍大企業から科学者を引き抜くのに週4日勤務が役に立ったと説明。「ぎりぎりのところで迷っている人材を獲得するのがずっと楽になった」と話した。
英人材採用代理店リード(Reed.co.uk)によると、年初から週4日勤務をうたう求人広告が増えている。
もっとも、全ての企業に週4日勤務が向いているわけではない。
イングランド東部にある産業用部品サプライヤーのオールキャップ社はコロナ禍中、防護設備や人工呼吸器の部品を供給するため従業員36人が全力で働いたため、コロナ後に週4日勤務を試してみた。しかし顧客の要求に常時応えつつ、従業員が年休を取ったり病欠で休んだりできるようにすること自体、難しかったという。
(Sarah Young記者、 David Milliken記者)
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