最新記事
BOOKS

分からなくても「毎朝15分」難しい本を読むことで起きたこと...人生を変える読書術

2023年4月4日(火)08時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
読書

bee32-iStock

<「分からない古典や哲学書にも挑戦しなければならない...」名文記者として知られる朝日新聞編集委員の近藤康太郎氏が説く、読書術について>

私たちは、本を読むのは知見を得て物事を理解するためだと思っている。しかし、本当にそうだろうか? 本を読むからには、分からなければならないのだろうか? 

発売後すぐに重版され、今話題書の『百冊で耕す 〈自由に、なる〉ための読書術』(CCCメディアハウス)は、博覧強記の読書家でもある近藤康太郎氏が文章読本の定番書『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』と対を成す1冊として上梓した。

その近藤氏が述べる、簡単に理解できて情報を得る実用書ばかりでなく、容易に分からない難しい本にも挑むべき理由とは?

◇ ◇ ◇

様々な読書メソッドに正解はあるのか

『百冊で耕す』は、読み方のノウハウを羅列しただけのビジネス実用書ではない。「実用書で初めて泣いた」という感想が多く寄せられた前著『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』と違わず、ロジカルかつリリカル。

哲学的に考え抜かれた強固な論理を、「エモ」とは違うエモーショナルな文章で書き、ジャンルを超えた古今の文献を縦横無尽に引き合いにしながら、読者を楽しませる。

さらには、「本を読む」という行為をするすべての者を、リスペクトし、アジテートする。「本を読んでいるあなたは魅力的だ。分からない本でも、大丈夫。さあ、もっと本を読もう!」と。

各章は「速読/遅読」「買う/借りる」「孤独の読書/みんなの読書」と二律背反の方法論で構成されている。

〈読書なんて人それぞれ、勝手に楽しめばいい〉と「はじめに」にある通り、どちらかの方法が正しいのではなく、どちらも正しい。少なくとも一理あると納得させられる。

そして、なぜそのような読み方をするのが良いのか、なぜ古来、人はそういう読み方をしてきたのかを深く掘る。

いつしか、二律背反の方法論は「読むことは愛されること/読むことは愛するということ」といった哲学的なテーマにまで昇華されていく。

 本を読む。その、もっともすぐれた徳は、孤独でいることに耐性ができることだ。読書は、一人でするものだから。ひとりでいられる能力。人を求めない強さ。世界でもっとも難しい〈強さ〉を手に入れる。
 読書とは、人を愛するレッスンだ。

──『百冊で耕す』164ページより(以下、引用はすべて同書)

つまり本書は、読むという行為を多角的に観察し、書物の存在意義、思考するということ、生き方の姿勢さえ問うてしまう、一風変わった思想書でもある。

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中