最新記事

BOOKS

年末年始に何を読む? 本の要約サービス「flier」がイチオシ本を熱くレビュー!

2022年12月22日(木)17時45分
flier編集部

編集部 池田友美のイチオシ

221221fl_nyp03.jpg

僕の狂ったフェミ彼女
 著者:ミン・ジヒョン
 翻訳:加藤慧
 出版社:イースト・プレス
 要約を読む

学生時代での合宿、「自炊」という名目で下級生の女子に料理を作らせるイベントがあった。長時間の移動で疲れたところに、慣れない台所で大人数の料理を作る立ち仕事。談笑する男子たち。なかなかできあがらない料理を前に「もう疲れちゃった」と弱音を吐いたら上級生の女生徒がやってきて言った。「文句を言うなんて、あなたはまだまだね」。

当時の私は自分が悪いのだと素直にしょんぼりしたのだけれど、今ならわかる。いやいや、この状況自体、男女差別だよね?と。

韓国小説『僕の狂ったフェミ彼女』に出てくるフェミニストの「彼女」は、こうした状況にはっきりと「NO」を突きつける。日本でフェミニストというと極端な主張をする人たちのイメージが根強いが、彼女が主張する「フェミニズム」はささやかなようにすら感じる。「彼女」に影響を受けて変化する女性たちが訴えはじめたのは、「共働きなのだから家事分担を見直したい」「今年の里帰りは私の実家に先に帰りたい」といったごく日常的な願いだ。しかし、これが家父長制の中で育った韓国の男性たちには受け入れられない。自分たちの妻が「フェミ」に侵されて「狂って」しまったと大騒ぎを始める。

あの「自炊」の場面に「彼女」がいたらどうなっていただろう。「なんで女子だけが料理をするの?」「ケータリングじゃダメなの?」などと言って、例の上級生と大げんかを始めたかもしれない。きっと「彼女」はこれからの世界のどこにでもいる。「狂って」いるのは、彼女か、世界か。もし「彼女」を見かけたら、いっしょに考えてみてほしい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中