年末年始に何を読む? 本の要約サービス「flier」がイチオシ本を熱くレビュー!
編集部 池田友美のイチオシ
『僕の狂ったフェミ彼女』
著者:ミン・ジヒョン
翻訳:加藤慧
出版社:イースト・プレス
要約を読む
学生時代での合宿、「自炊」という名目で下級生の女子に料理を作らせるイベントがあった。長時間の移動で疲れたところに、慣れない台所で大人数の料理を作る立ち仕事。談笑する男子たち。なかなかできあがらない料理を前に「もう疲れちゃった」と弱音を吐いたら上級生の女生徒がやってきて言った。「文句を言うなんて、あなたはまだまだね」。
当時の私は自分が悪いのだと素直にしょんぼりしたのだけれど、今ならわかる。いやいや、この状況自体、男女差別だよね?と。
韓国小説『僕の狂ったフェミ彼女』に出てくるフェミニストの「彼女」は、こうした状況にはっきりと「NO」を突きつける。日本でフェミニストというと極端な主張をする人たちのイメージが根強いが、彼女が主張する「フェミニズム」はささやかなようにすら感じる。「彼女」に影響を受けて変化する女性たちが訴えはじめたのは、「共働きなのだから家事分担を見直したい」「今年の里帰りは私の実家に先に帰りたい」といったごく日常的な願いだ。しかし、これが家父長制の中で育った韓国の男性たちには受け入れられない。自分たちの妻が「フェミ」に侵されて「狂って」しまったと大騒ぎを始める。
あの「自炊」の場面に「彼女」がいたらどうなっていただろう。「なんで女子だけが料理をするの?」「ケータリングじゃダメなの?」などと言って、例の上級生と大げんかを始めたかもしれない。きっと「彼女」はこれからの世界のどこにでもいる。「狂って」いるのは、彼女か、世界か。もし「彼女」を見かけたら、いっしょに考えてみてほしい。