まずは「相手を統制する」という考えを手放そう...「やる気に満ちたチーム」の実現法
一方、現場の社員は、通勤が減って職場と家の区切りをつけにくくなり、家族との時間が増えました。組織と距離ができたことで、「なぜこの会社にいるのか」と、自身の生き方を問い直しはじめたのです。
一番大変なのが、経営者と現場の社員にはさまれている中間管理職やリーダー層です。トップからの数字への圧力とメンバーの意識変革のギャップに悩んでいます。しかも、その葛藤は周囲の人には見えづらい状況にあります。
組織をコントロールすることができなくなった環境下で大事なことは何か。それは、トップや管理職層が監視や指示をしなくても社員が自律的に考えて、協力しながら行動する「自走する組織」を築くことです。
これまでも「自走する組織」は、一部の組織では実現されていました。海外ではW.L.ゴアやセムコなど有名ですし、国内でも「日本経営品質賞」を受賞する企業などの多くはそうですね。
ただし「自走する組織」の実現には、経営者の強い信念に基づく、粘り強い努力が必要でした。経済的なコストを考えると「管理する組織」のほうが有利だったのです。
ですが、工業社会から知識社会への移行にともない、あるべき組織像が変化してきました。特にコロナで「働き方の自由度」が一気に高まったことで、一人一人が主体的に動き、協働・共創することが不可欠になりました。いまや「自走する組織」はオプションではありません。組織変革の成否が、繁栄と衰退をわける分水嶺となってきたのです。
ここで、ひとつ大切なことがあります。「組織の経営」と同じく「組織の変革」も、これまでのように「全社を一斉に変革する」というウォーターフォール的なアプローチが効かなくなりました。人事部がいくら変化を呼びかけても、社員は「この忙しいときに、さらに仕事をさせる気か」となかなか反応してくれないということです。
組織変革においても大切なのは自律性です。「チームをもっとよくしたい!」と思う社員を応援し、その情熱の輪を広げていく、いわば「アジャイル型の組織変革」が効果的になってきたことです。ひとりから、チームを変え、組織を変える。トップや人事部の役割は、ボトムアップからの変革を全力で応援すること。そういう時代になったのです。