周りを生かせず孤軍奮闘してしまう人へ...「お通夜」会議をなくす「問いかけ」の手法
── 研ぎ澄まされた言葉なんですね。
はい。突き詰めていくと、チームのポテンシャルを発揮するには「こだわり」を育て、「とらわれ」を疑う、そのうえで「フカボリ」と「ユサブリ」をするということです。
メンバー一人ひとりの「こだわり」は「創造性の源泉」である一方、その「こだわり」や理念、目的が「とらわれ」になっていないかも疑い続ける。それが「チームのポテンシャルが発揮されている状態」だと、本書では説明しました。
極限まで言葉を削ってシンプルにしたこれらのひらがなとカタカナの表現は、私の中でもこだわりの部分ですね。
『問いかけの作法』
著者:安斎勇樹
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
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『問いのデザイン』
著者:安斎勇樹、塩瀬隆之
出版社:学芸出版社
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比較による相対化が言語化のカギ
── 以前、flier book laboのメンバー向けに、「言葉になりづらい技の言語化」が安斎さんの研究者としての強みであり、趣味であり、ライフワークだと話されていました。単刀直入に、「言語化するコツ」はどういったものでしょうか。
大きく2つあります。
1つ重要な点は、比較によってしか言語化はできないという観点です。「できる人」と「微妙にできない人」の違い、あるいは、できるようになった自分とできなかった1年前の自分のファシリテーションの違いなど、その差分の中で考えるということですね。
「去年はできなかったけど、今できるようになったことは何なのか」「あなたはできて実際に教えてもいるけれど、部下ができないことは何なのか」と、やはり比較対象との相対化を通じてしか、ミクロの技はあぶり出されないと思います。
そのステップを飛ばして、上手な人に「何に気を付けていますか」などと尋ねても、抽象的な答えしか返ってきません。そして自分自身も理解できず、実践もできないということになってしまいます。
── なるほど。比較して相対化するのですね。
はい。もう1つは、どのように言語化するか、まとめ方のパターンを知っていることも重要です。
例えば料理で説明しましょう。調理法を時系列で説明するやり方がレシピですよね。しかし、調理の説明方法は時系列だけではありません。例えば、プロの料理人の3つの工夫を並列し、一個一個独立させて羅列するやり方もあるでしょうし、「いつもより味が乱れているな」といった問題の状況、シチュエーションに合わせて処方箋を示す記述のし方もありますね。
一口に言語化と言っても、時系列のモデルが適しているのか、良い料理の条件を示したいのか、作り手のマインドセットを強調したいのか、言語化する方法について、適切な形式を選択することがコツかもしれませんね。