原研哉らが考える、コロナ後の「インバウンド復活」日本観光業に必要なもの
隠岐島には最近できたばかりの新しいホテル「Entô(エントウ)」がある。このホテルの客室には、ドカンとフレームにはまった窓がある。ベッドで寝そべって窓を見ていると、目の前をフェリーが通り過ぎていく。そこから見える景色全体をある種の価値に置き換えているのだ。
近代的な建築が隠岐島のような場所に出現すると違和感があるものだが、このホテルは周囲の環境を咀嚼し、風景を一つの現代アートのようにも見せてくれる。
隠岐島はユネスコからジオパーク指定されているエリアだが、その自然環境をどう活かしていくかについて町全体が一生懸命考えていると原は感じたという。
2030年には6000万人のインバウンドが見込めるという政府の予測の一方で、環境問題についても考えていく必要がある。地球の限界とも呼ばれる「プラネタリー・バウンダリー」の状況下では、単にインバウンドが日本にたくさん来ればいいという話ではない。「エントウ」のように、観光における風光をデザインしていくのであれば、環境問題と密接にリンクしていくことになるだろう。
楽観論だけでない、新たな観光業を創造することが求められている。
『この旅館をどう立て直すか 瀬戸内デザイン会議―1 2021宮島篇』
瀬戸内デザイン会議 編
CCCメディアハウス
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