SkillだけでなくWill、MustよりWant、だから「プロセスエコノミー」はこんなに楽しい
SkillとWill
── 本書の編集は、オンラインサロンのメンバーの方々とも協力して手掛けられたとうかがっています。実践された「プロセスエコノミー」の醍醐味を、あらためてお聞かせください。
本書には書いていないことですが、プロセスエコノミーを実践するには、読者と本を提供する人が一緒に走り、変化に向かってずっと走り続けないといけません。
マッキンゼーでよく使われているスキル(Skill)とウィル(Will)という言葉で表すと、本はスキルを分かりやすく提供するものと思われがちです。しかし本当に大事なのは、「変化に対して歩み続ける、楽しむ」というウィル、「やりたい、やって楽しい」という気持ちをどう共有化していくかということです。
その意味で、本書の出版までのプロセスをオープンにすることにより、参加者から「この部分に熱くなりました」とか「実際に始めてみて、自分たちの視野が変わってきました」といった声が寄せられました。ウィルが変わると、見える風景が変わってきます。そして、風景が変わると、歩むことがより楽しくなります。
この良循環は、スキルだけでは起こりません。スキルとウィルをセットでどう共有していくかが大切なのです。
MustではなくWant
── 本書の中で「1億総発信者時代の「Why」の価値」を解説されていました。発信に積極的な人が増えている一方、発信をためらう人も少なくないようです。発信するうえで大切なのはどのようなことでしょうか。
「Why」の価値、「発信」の価値はいずれも大事ですが、一番大事なのは、発信が「ゴール目的」なのか、「プロセス目的」かということです。
自分が何を重んじているのか。「Why」の大事さというのはあるのですが、そもそも本当に自分が好きなことなら、発信しているだけで楽しいはずですよね。
日本は、慣習的にモノの価値で選ばれやすく、いかに自分を削って無駄をそぎ、我慢して出来上がったものが相手に喜ばれるという価値観が長く根差してきたように思います。「ゴールに行くまでは我慢しましょう」「いいものをつくるまでは我慢しましょう」というのが、日本の中で主流の価値になってしまいました。そのため、「発信はちゃんとしなきゃいけないのでは」とか「発信するためにはちゃんとコアを作らないといけない」と思われる風潮があります。
── たしかに日本人は我慢強いと言われますね。
例えば、散歩はただ散歩するだけで楽しいですよね。歩いて移動しているだけ、そのプロセスがただただ楽しい、というのはあるはずです。それでふと後ろを振り向いたら、「あれ? こんなに進んでいたのか」と気づく。
「Why」の価値、「発信」の価値で言えば、「しなければならない」という心の中にマスト(Must)が生まれたら、「好きだから話したい」「どんな稚拙でもいいので、好きだから表現したい」、という考えに立ち戻ることです。