最新記事

投資

増え続ける日本のFX投資家にもウクライナ情勢が影落とす 新興国通貨投資が抱えるリスクとは?

2022年3月15日(火)14時44分
トルコリラの紙幣

FX(外国為替証拠金取引)を行う日本の個人投資家が増え続けている。ドル/円だけでなく、高金利や値動きの良さが魅力の新興国通貨も依然として人気だ。だが、新興国通貨にはウクライナ情勢と米利上げの2つのリスク要因が強まっている。写真はトルコリラの紙幣。アンカラの両替所で2021年10月撮影(2022年 ロイター/Cagla Gurdogan)

FX(外国為替証拠金取引)を行う日本の個人投資家が増え続けている。ドル/円だけでなく、高金利や値動きの良さが魅力の新興国通貨も依然として人気だ。だが、新興国通貨にはウクライナ情勢と米利上げの2つのリスク要因が強まっており、今後は、資源国とそれ以外の国で明暗が分かれるとの見方もある。

過去最高の口座数

最近の外為市場では「ミセス・ワタナベ」の名を聞くことは少なくなったが、実はFX個人投資家の口座数は右肩上がりで増加している。金融先物取引業協会が公表している店頭外国為替証拠金取引データによると、2021年10―12月期は976万3863口座で、過去最高を更新中だ。

今年2月の取引金額は前月比6.3%増の538兆円。ウクライナを巡る地政学リスクが高まる中でも増加した。最も取引金額が多い通貨ペアはドル/円で全体の61%、次いで英ポンド/円が9.3%、ユーロ/円が9.2%となっている。新興国通貨は、豪ドル/米ドルが7位、ニュージーランド(NZ)ドル/円が8位となっており、人気は健在だ。

口座数増加の背景には、投資環境の変化や、スマホなどデバイスの普及、少額で始められる手軽さ――などがあると、ニッセイ基礎研究所の上席エコノミスト、上野剛志氏は分析する。低金利環境の中、手軽かつ少額で始められるFX投資の人気が高くなっているという。

メキシコペソ/円は16年以前は30―40位台で推移していたが、徐々に取引量が増加し、22年2月の通貨ペア取引金額で10位に上昇している。直近では、ウクライナ情勢の緊迫を受け「米国がロシア産原油の輸入を禁止すると発表した前後では、メキシコペソ/円の約定金額が大きく上昇した」と松井証券のマーケットアナリスト、瀬麻衣子氏は話す。

2つのリスク

しかし、新興国通貨には下落リスクが高まっている。1つはウクライナ情勢を巡る地政学リスクの高まりだ。新興国通貨は高リスク通貨が多く、マーケットのリスク回避傾向が強まる局面では、過去にも大きく売られてきた。

米国の金融引き締めも大きなリスクだ。国際決済銀行(BIS)によると、新興国全体の米ドル債務は21年7―9月期で4.2兆ドル。南アフリカやアルゼンチン、ロシアは減少しているが、トルコやチリ、サウジアラビアなどの伸びが高い。米国の利上げはこうした国の利払い額を増加させるおそれがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動

ビジネス

米経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス

ビジネス

金、今年10度目の最高値更新 貿易戦争への懸念で安

ビジネス

アトランタ連銀総裁、年内0.5%利下げ予想 広範な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中