増え続ける日本のFX投資家にもウクライナ情勢が影落とす 新興国通貨投資が抱えるリスクとは?
FX(外国為替証拠金取引)を行う日本の個人投資家が増え続けている。ドル/円だけでなく、高金利や値動きの良さが魅力の新興国通貨も依然として人気だ。だが、新興国通貨にはウクライナ情勢と米利上げの2つのリスク要因が強まっている。写真はトルコリラの紙幣。アンカラの両替所で2021年10月撮影(2022年 ロイター/Cagla Gurdogan)
FX(外国為替証拠金取引)を行う日本の個人投資家が増え続けている。ドル/円だけでなく、高金利や値動きの良さが魅力の新興国通貨も依然として人気だ。だが、新興国通貨にはウクライナ情勢と米利上げの2つのリスク要因が強まっており、今後は、資源国とそれ以外の国で明暗が分かれるとの見方もある。
過去最高の口座数
最近の外為市場では「ミセス・ワタナベ」の名を聞くことは少なくなったが、実はFX個人投資家の口座数は右肩上がりで増加している。金融先物取引業協会が公表している店頭外国為替証拠金取引データによると、2021年10―12月期は976万3863口座で、過去最高を更新中だ。
今年2月の取引金額は前月比6.3%増の538兆円。ウクライナを巡る地政学リスクが高まる中でも増加した。最も取引金額が多い通貨ペアはドル/円で全体の61%、次いで英ポンド/円が9.3%、ユーロ/円が9.2%となっている。新興国通貨は、豪ドル/米ドルが7位、ニュージーランド(NZ)ドル/円が8位となっており、人気は健在だ。
口座数増加の背景には、投資環境の変化や、スマホなどデバイスの普及、少額で始められる手軽さ――などがあると、ニッセイ基礎研究所の上席エコノミスト、上野剛志氏は分析する。低金利環境の中、手軽かつ少額で始められるFX投資の人気が高くなっているという。
メキシコペソ/円は16年以前は30―40位台で推移していたが、徐々に取引量が増加し、22年2月の通貨ペア取引金額で10位に上昇している。直近では、ウクライナ情勢の緊迫を受け「米国がロシア産原油の輸入を禁止すると発表した前後では、メキシコペソ/円の約定金額が大きく上昇した」と松井証券のマーケットアナリスト、瀬麻衣子氏は話す。
2つのリスク
しかし、新興国通貨には下落リスクが高まっている。1つはウクライナ情勢を巡る地政学リスクの高まりだ。新興国通貨は高リスク通貨が多く、マーケットのリスク回避傾向が強まる局面では、過去にも大きく売られてきた。
米国の金融引き締めも大きなリスクだ。国際決済銀行(BIS)によると、新興国全体の米ドル債務は21年7―9月期で4.2兆ドル。南アフリカやアルゼンチン、ロシアは減少しているが、トルコやチリ、サウジアラビアなどの伸びが高い。米国の利上げはこうした国の利払い額を増加させるおそれがある。