最新記事

投資

増え続ける日本のFX投資家にもウクライナ情勢が影落とす 新興国通貨投資が抱えるリスクとは?

2022年3月15日(火)14時44分

前回、米利上げが始まった15年以降は、新興国からの資金流出がみられ、トルコリラや南アランド、メキシコペソなどが下落した。15─16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では18年12月以来の利上げが確実視されている。

「欧州に比べ米国はロシアからの影響が小さい。FOMC後のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見では、インフレへの対応を優先するとの発言が出れば、タカ派的な印象になるのではないか」と三井住友銀行のチーフ・マーケット・エコノミスト、森谷亨氏はみる。

資源輸入国には試練

トルコリラ/円は金融先物取引業協会のデータで全通貨ペア中20位と上位ではないが、値動きの良さから個人投資家には根強い人気がある。

1年ほど前からトルコリラ/円の取引をしている福島県在住の男性は「昨年12月にエルドアン大統領の発言を受けてトルコリラが乱高下した際は、反対売買を仕掛けて利益を出せた」と話す。米利上げやウクライナ情勢悪化を受けても、トルコリラの値動きの軽さが魅力だといい、今後もトルコリラ/円の取引を続ける予定という。

ただ、トルコは石油の93%、天然ガスの99%を輸入するエネルギー輸入国だ。通貨安は輸入価格をさらに上昇させるため、資源輸入国の経済を痛撃する。足元で、商品価格が軒並み高騰する中、トルコリラ/円は下落を続けている。トルコの政策金利は14%と高いが、2月の消費者物価指数は前年比54%上昇だ。

宮城県在住の会社員の男性は、トルコリラの取引を止めた。高金利に魅力を感じて10年以上前からトルコリラ/円の取引を中心に行っていたが、昨年末のトルコリラ暴落やウクライナ情勢の悪化をきっかけに手を引いた。現在は、豪ドル/円やニュージーランドドル/円など資源国通貨を手掛けているという。

バークレイズ証券の為替ストラテジスト、ラムスレン・シャラブデムベレル氏は、「インドやトルコなど、資源輸入国にとって、資源高は経常収支の悪化につながる」と指摘。過熱気味の商品価格は波乱含みだが、資源国とそれ以外の国の通貨で明暗が分かれる可能性があるとの見方を示している。

(浜田寛子 編集:伊賀大記)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・ウクライナに「タンクマン」現る 生身でロシア軍の車列に立ち向かう
・ウクライナ侵攻の展望 「米ロ衝突」の現実味と「新・核戦争」計画の中身


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロ報道官、エネ施設攻撃の一時停止は継続と説明 「状

ビジネス

英サービスPMI、3月速報値7カ月ぶり高水準 製造

ビジネス

米企業利益見通し、年初来で4.5%ポイント低下 関

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、3月は7か月ぶり高水準 製造業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放すオーナーが過去最高ペースで増加中
  • 2
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    ロシア軍用工場、HIMARS爆撃で全焼...クラスター弾が…
  • 5
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 6
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    ドジャース「破産からの復活」、成功の秘訣は「財力…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    インド株から中国株へ、「外国人投資家」の急速なシ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャース・ロバーツ監督が大絶賛、西麻布の焼肉店はどんな店?
  • 4
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 8
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中