世界のサプライチェーンに光明射すもコロナ前への回帰は期待薄
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世界のサプライチェーン(供給網)危機が、今年末ごろにようやく解消に向かいそうな兆しが出てきた。写真はロサンゼルスの港に積みあがったコンテナ。2021年11月撮影(2022年 ロイター/Mike Blake)
世界のサプライチェーン(供給網)危機が、今年末ごろにようやく解消に向かいそうな兆しが出てきた。しかし、目詰まりはあまりに激しく、一部の産業では「辛うじて正常」な状態に戻るのさえ来年の遅い時期になりそうだ。しかも、コロナ禍によって新たな混乱が生じないことが条件になる。
米食品大手・ケロッグのスティーブ・カヒレーン最高経営責任者(CEO)は「今年後半には人手不足、ボトルネック、サプライチェーン全体を現在見舞っている混乱が、徐々に和らぎ始めると期待している」と話す。同時に「混乱があまりにも劇的なので、2024年までは正常と言えるような環境には戻らないだろう」と付け加えた。
世界の貿易システムにとって、コロナ禍のような事態は初めての経験だった。
2020年当初、景気悪化に見舞われた企業は向こう1年間の生産計画を撤回した。ところが、その後にワクチンの急速な普及と景気刺激策の効果によって需要が上向くという不意打ちを食らった。
さらに、新型コロナウイルス感染防止のための制限措置と集団感染によって人手不足が生じ、工場が閉鎖を余儀なくされた。これは消費がサービスからモノに移行するタイミングと重なった。
欧州中央銀行(ECB)のレーン専務理事兼主任エコノミストはこの状況を、第2次世界大戦後になぞらえている。当時も需要が爆発的に伸び、企業は軍事物資から民生品の製造へと体制の急転換を迫られた。
今回、ドイツなどの輸出主導型経済は工場の供給ボトルネックが景気回復を阻む要因となった。一方、米国は輸送コストの急上昇と燃料価格の高騰が重なり、40年ぶりの高インフレに見舞われた。
まだら模様
現在、新型コロナのオミクロン株が従来株に比べて重症化を引き起こしにくいとして、各国当局が制限を緩めたため、供給問題が解消に向かいそうな兆候が垣間見えている。
米サプライマネジメント協会(ISM)の1月調査では、雇用と入荷状況が3カ月連続で改善。IHSマークイットが発表する製造業購買担当者景気指数(PMI)では、欧州でも供給制約が和らいでいることが示された。
IHSマークイットは、英国の調査について「相変わらずサプライチェーンの制約が成長を阻害し続けているが、峠は越えた兆しがある。このことが購入価格インフレのわずかな緩和につながっている」と説明した。
このため各国中銀は、年末に向けてインフレ圧力が目に見えて低下するとの期待を抱くようになった。中銀は一方で、実体経済がまだら模様のメッセージを発し続けていることも分かっている。