最新記事

ネット

若者の「食べログ離れ」が止まらない 信頼を失った口コミサイト、ユーザーはインスタやグーグルマップへ

2022年2月12日(土)11時55分
高橋暁子(成蹊大学客員教授) *PRESIDENT Onlineからの転載

食べログのPRサービスは「ライト」から「プレミアム10」までの4種類あり、月額固定で1万~10万円だが、標準検索優先表示などの露出を増やすためには月額2万5000円の「ベーシック」以上のプランに加入しなければならない。ネット予約サービスを利用する場合は、ランチで一人当たり100円、ディナーで一人当たり200円の従量課金制となる仕組みだ。

有料サービスがコロナ禍の飲食店にのしかかっている

食べログ以外のグルメサイトでも、有料サービスに加入しないといけないプレッシャーが飲食店にかかっている。

たとえばぐるなびでは、店舗情報の掲載に、「スタートプラン」から「ベーシックプラン」まで3種類のプランが用意されている。スタートプランでのネット予約手数料は、ランチで一人当たり40円、ディナーで一人当たり200円などの従量課金制だ。さらにぐるなびでの露出を増やしたいと思えば「ライトプラン」以上の利用が必要となり、月額固定の基本加盟料は1万1000円~3万3000円かかってくる。

しかし、コロナ禍で続く外出自粛で飲食店が経営難となり、家賃と合わせて、このようなグルメサイトの手数料が重荷になっている。その結果、日経ビジネスによると、飲食店が食べログやぐるなびなどのグルメサイトに有料会員の解除や手数料の減額を求めているという。グルメサイト側も一時的に無料などの措置を取ったものの、会員数は減少し続けている(※)。
「新型コロナで加速するグルメサイト離れ、今こそ外食支援を」

「もうGoogle MapとSNSだけでいいでのは」

ある飲食店経営者は「無料のGoogle Map経由での来店客が増えている。もうこれとSNSをやるだけでもいいのではと思って、食べログの有料サービス登録を解除した。こちらはコロナ禍で生き残れるかどうかの瀬戸際。固定料がかかるグルメサイトは厳しい」と話す。

Google Mapで検索した場合、自分のいる場所の近くにある店が見つけられ、そのままルート検索もできる点が特徴だ。口コミなども充実しており、混雑具合が確認できるのも便利だろう。

写真投稿に特化したInstagramでも、地名やジャンルをハッシュタグで検索すると飲食店が調べやすい。検索画面右上の地図アイコンをタップすると、地図上には付近の店舗が表示され、店舗公式アカウントや来店したユーザーが投稿した料理や店舗の写真を見ることもできる。

もちろん、食べログアプリでも現在地付近の店舗を調べることができる。店舗情報を調べたり予算などの条件を指定しての検索がしやすくなっており、利便性で劣るわけではない。

サービスの根幹部分で信頼を失っているのが問題

食べログなどのグルメサイトは、決して使われなくなっているわけではない。しかし、グーグルやInstagramなどの台頭を考えると、信頼性がこれ以上低下した場合、形勢が逆転する可能性さえある。

これまで述べてきたように、グルメサイトにとって課題は山積みだ。しかし中でも一番問題なのは、サービスの根幹を成す点数やランキング、口コミなどの信頼性が損なわれていることだ。今こそ、これまで浮上した数々の疑惑を完全に否定し、ランキングや点数などの透明性を高くしていく必要があるのではないのか。同時に、コロナ禍で困窮する飲食店に寄り添ったり、競合サービスの良いところを取り入れるなどの工夫も必要だろう。

消費者としては信頼できる使い勝手が良いサービスを利用していくだけのこと。コロナ禍もまだ終わりそうにない。グルメサイトは、これからが正念場なのだ。

高橋暁子(たかはし・あきこ)

成蹊大学客員教授、ITジャーナリスト
書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『ソーシャルメディア中毒』『できるゼロからはじめるLINE超入門』ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル、ハマスが人質リスト公開するまで停戦開始

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中