最新記事

オフィス

急速に進むリアルオフィスへの回帰...企業に求められる「働く場」改革とは

2021年10月29日(金)11時00分
西山亨

ブース内には0.3μm以上の粒子を99.97%以上捕集するHEPAフィルターが備え付けられており、毎分1万2000ℓもの空気を浄化。これは厚生労働省が推奨する一人あたりの換気量を基準にして計算すると、30人分の換気量となる。この下方向の気流によってブース内の空気を浄化するだけでなく、ブース周辺の空気も吸引するためフロア全体の空気を循環・清浄することができる。

さらに瀬戸教授によれば、「家庭用の空気清浄機を『強』で使うと運転音が大きくなってしまうが、ダウンフローの場合は広い面積からたくさんの風量を出すため、騒音によるストレスなどの問題はかなり解消されている」という。

さらに、ブース内に設置されたCO2濃度や温湿度、人感を測るセンサーによって、空気環境や利用状況を常時計測。データを分析したレポートが定期的に送られ、問題点の発見や改善が可能となる。こうした改善を積み重ねることで、もし将来的にブース内ではマスクが外せるようになれば、より綿密なコミュニケーションが取れるようになるだろう。

安心できる空間から快適な空間へ

ダウンフローをはじめとした技術を利用することで、従業員同士のコミュニケーションはテレワークの場合よりも格段に活性化することが期待される。では今後さらに技術開発が進むと、オフィスでのコミュニケーション空間はどのように変わっていくのだろうか。

瀬戸教授は、「空気をきれいにすることと同時に快適性も高めていけるのではないか」と指摘する。「いろいろな風を組み合わせることで、気分転換やリラックスを促進してオフィスでの創造性を高める、そんな方向性はあるかもしれない」

AIによる画像認識技術を応用すれば、会議出席者の状態をモニタリングすることもできる。議論がヒートアップしていれば落ち着かせ、眠そうにしている人がいれば活性化させる、そんな空調も可能なのかもしれない。コミュニケーションの場がそのように進化すれば、オフィスに回帰することの価値も、その分だけ高まっていくだろう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

日経平均は続伸、米経済の底堅さ支え 米財務長官人事

ビジネス

カナダ小売売上高、9月は0.4%増 大幅利下げの予

ワールド

リトアニア首都の空港付近でDHL貨物機墜落、1人死

ビジネス

午後3時のドルは一時153円台、1週間ぶり安値 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中