スタンフォード大MBA学生の9割が受講する「人間関係」の授業の中身
また、その日の朝の同僚のおかしな言動を単に伝達するのではなく、「サンジェイだったらどう対応したか」と尋ねる方法もあるかもしれない。あるいは、もう少しリスクを取って、「自分には柔軟性が足りないのではないか」という不安を打ち明ける方法も考えられるだろう。いずれの自己開示も深刻な事態につながる可能性は低く、2人の関係をただの「キャンプ仲間」以上に発展させる力を秘めている。
ひとえに自己開示といっても、簡単ではない。「自分には無理」と言いたくなることもあるだろう。しかし授業で同じように「無理」と訴えていた多くの学生が、学期末を迎える頃には必要な能力を身につけ、「過酷な道だが、私には選択肢がある」というマインドセットに変わっているという。苦しい道のりなのは紛れもない事実だが、やってみる価値はある挑戦だ。
人間関係には失敗や誤解があっても、修復は可能
10年前、いや20年前にこの本を読んでいれば、失わずに済んだ人間関係があったかもしれない。本書を読み進めながら、そう思う瞬間が何度かあった。私たちの多くは人間関係におけるセオリーを持たないまま、多くは社会に押し出される。もちろん年齢を重ねれば経験の蓄積はできるが、それでは遅すぎる。すでに失った関係に火を灯すことの難しさを知っているからだ。その後悔と恥ずかしさに頭をかきむしりたくなる。
本書には修復の方法に「金継ぎ」を提案しているので、取り戻したい関係があるならばそれを実践してほしい。金継ぎとは、壊れた陶磁器を修復する日本独自の手法だ。菌や銀、白金などの金属粉を漆に混ぜて破損した部分に塗ると、陶磁器の修復という実用的な目的が果たされるだけでなく、割れやひびの模様が美しく浮かび上がってくる。そこには哲学がある。
――物が壊れても、それは隠して捨て去るべき過去ではなく、祝福されるべき歴史の1ページである――
破損部分を強調する金属粉の装飾は、何かが壊れても、そのおかげで一段と美しくなれることを示している。それは人間関係の「ひび割れ」と、その修復方法にも同じ原則が当てはまると著者たちは言う。金継ぎによって修復できた関係からは、どんなに意見が対立しても乗り越えられるという自信が手に入る。大切な人間関係を格別の関係に進化させることでこそ、心豊かな人生へと近づくことができるはずだ。
『スタンフォード式 人生を変える人間関係の授業』
著者:デイビッド・ブラッドフォード、キャロル・ロビン
出版社:CCCメディアハウス
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