最新記事

人間関係

スタンフォード大MBA学生の9割が受講する「人間関係」の授業の中身

2021年10月5日(火)18時19分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

また、その日の朝の同僚のおかしな言動を単に伝達するのではなく、「サンジェイだったらどう対応したか」と尋ねる方法もあるかもしれない。あるいは、もう少しリスクを取って、「自分には柔軟性が足りないのではないか」という不安を打ち明ける方法も考えられるだろう。いずれの自己開示も深刻な事態につながる可能性は低く、2人の関係をただの「キャンプ仲間」以上に発展させる力を秘めている。

ひとえに自己開示といっても、簡単ではない。「自分には無理」と言いたくなることもあるだろう。しかし授業で同じように「無理」と訴えていた多くの学生が、学期末を迎える頃には必要な能力を身につけ、「過酷な道だが、私には選択肢がある」というマインドセットに変わっているという。苦しい道のりなのは紛れもない事実だが、やってみる価値はある挑戦だ。

人間関係には失敗や誤解があっても、修復は可能

10年前、いや20年前にこの本を読んでいれば、失わずに済んだ人間関係があったかもしれない。本書を読み進めながら、そう思う瞬間が何度かあった。私たちの多くは人間関係におけるセオリーを持たないまま、多くは社会に押し出される。もちろん年齢を重ねれば経験の蓄積はできるが、それでは遅すぎる。すでに失った関係に火を灯すことの難しさを知っているからだ。その後悔と恥ずかしさに頭をかきむしりたくなる。

本書には修復の方法に「金継ぎ」を提案しているので、取り戻したい関係があるならばそれを実践してほしい。金継ぎとは、壊れた陶磁器を修復する日本独自の手法だ。菌や銀、白金などの金属粉を漆に混ぜて破損した部分に塗ると、陶磁器の修復という実用的な目的が果たされるだけでなく、割れやひびの模様が美しく浮かび上がってくる。そこには哲学がある。

――物が壊れても、それは隠して捨て去るべき過去ではなく、祝福されるべき歴史の1ページである――

破損部分を強調する金属粉の装飾は、何かが壊れても、そのおかげで一段と美しくなれることを示している。それは人間関係の「ひび割れ」と、その修復方法にも同じ原則が当てはまると著者たちは言う。金継ぎによって修復できた関係からは、どんなに意見が対立しても乗り越えられるという自信が手に入る。大切な人間関係を格別の関係に進化させることでこそ、心豊かな人生へと近づくことができるはずだ。

スタンフォード式 人生を変える人間関係の授業
 著者:デイビッド・ブラッドフォード、キャロル・ロビン
 出版社:CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、復活祭の一時停戦を宣言 ウクライナ

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪肝に対する見方を変えてしまう新習慣とは
  • 3
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である
  • 4
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 5
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 9
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 10
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 9
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中