スタンフォード大MBA学生の9割が受講する「人間関係」の授業の中身

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<スタンフォード大学MBAの9割が受講する「インターパーソナル・ダイナミクス(人間関係の力学)」。世界のリーダーを目指す学生たちは、理論と実践で人間力を磨いている>
コロナ禍がもたらしたことの一つに、人間関係の「シンプル化」があるだろう。人との接触が極端に制限される中で、新たな関係を築くのは難しかった。とはいえ、社会生活を送るうえで人との関係はゼロにはならない。家族やパートナー、友人や同僚との関係は、これまで以上に重要で貴重なものに感じられたのではないだろうか。
この度、『スタンフォード式 人生を変える人間関係の授業』(CCCメディアハウス)が上梓された。本書は、アメリカの名門スタンフォード大学のビジネススクールで50年以上にわたり開講されている講義をまとめた1冊だ。
人間関係というソフトスキルがもたらすのは、ビジネス上の成功だけではない。人生におけるあらゆるパートナーシップを築くうえで知っておきたい関係構築の法則が実践的に書かれている。
本書の著者は、デイビッド・ブラッドフォードとキャロル・ロビンの2人。今ではこの本を共同で執筆するほど格別の関係を築いている彼らだが、実は過去には関係が崩壊寸前になったことがあるという。縁が切れる瀬戸際まで追い込まれても、そこからどうやって関係を修復できたのかも気になるところだが、まずは人間関係の深め方から考えていこう。
自分をさらけ出す「15%ルール」
人間関係はどれ1つとして同じではないが、関係が深まるプロセスには似たようなパターンが見られる。よくあるのは、音楽やハイキングのような共通の趣味から始まる関係。逆に、計画を立てて主導するのが好きな人と、そういう作業を面倒に感じる人という具合に、正反対のタイプの組み合わせもあり得る。
浅い関係がちょうどいい相手もいるだろうが、関係を深めたい相手もいるだろう。その場合は互いを知るという初期のステージを超えて、より率直かつプライベートなコミュニケーションへと足を踏み入れていくことになる。そこではリスクを冒して心の内をさらけ出すレベルを劇的に引き上げる必要がある。
ここで、本書で紹介されている「職場の同僚であるエレーナとサンジェイ」の例を見てみよう。
「エレーナとサンジェイは別の部署の所属だが、1年ほど前に技術審査のプロジェクトに携わった際に知り合った。2人は互いの発想を生かし合い、意見の相違も前向きに乗り越え、プロジェクトが終わった後も、2人は定期的にランチで近況を報告し合っている。アウトドアが互いに好きなこともあり、家族ぐるみでの付き合いもある。友情も感じるし、仕事の相談もできる貴重な友人であるとエレーナは感じている。
一方、同じ職場であることで、自分が過去の汚点と感じているあることをサンジェイにエレーナは話すことができず、今朝起こった同僚との揉めごとについて相談できないでいる」