世界最大2.5兆円の中国eスポーツ市場に激震 規制強化で天才プレーヤー発掘困難に
中国は世界最大のeスポーツ市場で、チームの数は5000余りと言われる。しかし政府の新規制で、プロプレーヤーのチャンさんのようなキャリアを目指すのは難しくなるだろう。写真はeスポーツチーム「侠盗勇士」のプレーヤー。オンラインバトルゲーム「伝説対決」を練習している。上海で3日撮影(2021年 ロイター/Aly Song)
上海を拠点とするeスポーツチーム「侠盗勇士(Rogue Warriors)」のメンバーはガラス張りの会議室で、ときに食事を挟みつつ、スマートフォンをたたき、午前11時から深夜までトレーニングに励む。
騰訊控股(テンセント・ホールディングス)のオンラインバトルゲーム「伝説対決(Arena of Valor)」のプロプレーヤー、チャン・カイフェンさん(19)は「1日24時間のうち15時間はビデオゲームをしているよ」と話す。ゲームの腕を保つには長時間プレーすることが必要だという。
ビデオゲームを用いた対戦競技の「eスポーツ」。中国は世界最大のeスポーツ市場で、チームの数は5000余りと言われる。しかし、ゲーム中毒の抑制を狙う政府の新規制で、チャンさんのようなキャリアを目指すのは難しくなるだろう。
中国政府はゲーム企業に18歳未満のネットゲーム利用を週3時間に制限するよう求め、10代の若者から怒りの声が上がっている。これまでの利用制限は平日が1.5時間、週末が3時間だった。
eスポーツのトッププレーヤーは10代のうちに発掘され、20代半ばで引退するのが一般的。専門家によると、トレーニングの激しさは五輪の体操選手や飛び込み選手並みだ。
米ライアット・ゲームズのオンラインバトルゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」のプレーヤーとして世界的に有名なウー・ハンウェイさんは14歳でプレーを始め、16歳でチームに加入した。
北京大学電子工学・コンピュータサイエンス学部のチェン・ジャン准教授は「規制強化により、若者がeスポーツ界でプロのプレーヤーになるチャンスは、ほぼなくなった」と話した。
今回の規制強化は、eスポーツという中国の巨大産業の土台をむしばみもする。eスポーツのトーナメントは10億ドル規模のスタジアムで開催されることが珍しくなく、対戦の様子は多くの視聴者にライブでストリーミング配信される。