仮想通貨ブームのパキスタン、後手に回る法規制
パキスタンでは暗号資産は違法ではない。しかし、世界各国・地域のマネーロンダリング(資金洗浄)などの対策を調べる国際組織「金融活動作業部会」(FATF)は、テロ資金や資金洗浄の監視が甘いとして、同国を「灰色リスト」に入れている。6月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)
グラム・アフマドさん(38)は週に1度、暗号資産(仮想通貨)のコンサルティング業務の合間を縫って対話アプリ「ワッツアップ」にログインし、パキスタンでどのように暗号通貨の「採掘」や取引を行うかを数百人のメンバーに指南している。
参加者は副収入を得たい主婦から採掘用装置の購入を望む裕福な投資家まで、多岐にわたる。多くの人は従来の株式市場の仕組みすらほとんど理解していないが、それでも誰もが稼ぎを得ようという熱意にあふれている。
「質問コーナーを設けるとメッセージが殺到するため、何時間もかけて質問に答え、暗号資産の基本を教えている」と語るアフマドさんは、ビットコインの採掘の方が儲かると考え、2014年に仕事を辞めた。
パキスタンでは、暗号資産の取引や採掘がブームになっており、ソーシャルメディアでは関連動画が何千回も再生され、オンライン取引所で数多くの売買が行われている。
パキスタンでは暗号資産は違法ではない。しかし、世界各国・地域のマネーロンダリング(資金洗浄)などの対策を調べる国際組織「金融活動作業部会」(FATF)は、テロ資金や資金洗浄の監視が甘いとして、パキスタンを「灰色リスト」に入れている。
こうした動きを受けて、パキスタン政府は暗号資産の規制を検討する委員会を立ち上げた。同委員会にはFATFがオブザーバーとして加わっているほか、パキスタン政府の閣僚や情報機関の責任者などが参加している。
オックスフォード・フロンティア・キャピタルのパートナーで、カラチの証券会社の会長でもある委員会メンバーのアリ・ファリド・クワジャ氏は「メンバーの半分が暗号資産が何かを全く理解せず、理解しようともしていなかった」という。
一方で、クワジャ氏は「委員会が立ち上げられたのは良かった。成果を出さざるを得ない政府関係機関が委員会を支援しており、誰も技術革新の邪魔をしようとしないのは見込みがある」と期待も寄せる。
パキスタン中央銀行のバキル総裁は今年4月のCNNテレビで、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を検討していると述べ、簿外の取引を規制の枠組みに組み込む可能性に言及。「数カ月以内に何らかの発表が可能になる」と表明した。
総裁はこの発言について、ロイターからのコメント要請に応じなかった。