仮想通貨ブームのパキスタン、後手に回る法規制
暗号資産は、教育界でも注目を集めている。国内有数の大学であるラホール経営科学大学は今年2月、ビットコインをアプリやスマートコントラクトに結びつけるブロックチェーンネットワークのスタックス社から、410万ドルの研究助成金を受けた。
スピード不足
ただ、暗号資産の普及を支持する人々にとって、関連する法律の整備や投資は、十分なスピードとは到底言えない。
金融機関が資金洗浄に絡む懸念から、暗号資産の取引を手掛ける人々に疑いの目が向けられてきたということもある。
アフマドさんはこれまでに2度、連邦捜査局(FIA)に逮捕され、資金洗浄と電子詐欺の容疑で起訴されたが、裁判では無罪となった。
アフマドさんは同国北部、カイバル・パクトゥンクワ州のシャングラに設置した、自前の水力発電で稼働する暗号資産採掘施設をFIAに押収されたこともあるという。FIAは、ロイターのコメント要請に応じなかった。
ユーチューブで100万人以上のフォロワーを持つ元テレビ司会者のワカール・ザカさんは、暗号資産業界の合法化とこの業界への公的投資を何年も政府に働きかけてきた。ザカさんもアフマドさんと同様に、水力発電を利用した暗号資産採掘施設を立ち上げている。
今年初めにカイバル・パクトゥンクワ州政府は、暗号資産関連ベンチャーから利益を得る方法を検討する委員会のメンバーにザカさんとアフマドさんを起用。3月にはザカさんの施設をひな形に、新たな採掘施設の設立を検討していると発表した。
もっとも州政府は、暗号資産に関する新たな政策は連邦政府が扱うべきだとして、6月にこの委員会を解散した。
課題はあるが、パキスタンの暗号資産ブームは止む気配がない。
パキスタンを拠点とするソーシャルメディアグループには、暗号資産の取引や採掘の方法を説明するものが多く、中にはフェイスブックのフォロワー数が数万人に達するグループもある。ユーチューブではウルドゥー語で書かれた暗号資産の動画が、何十万回も再生されている。
ローカルビットコインズ・ドット・コムのようにパキスタン国外に拠点を置くオンライン暗号資産取引所には、何百人というパキスタン人トレーダーが登録しており、何千件もの取引実績を持つトレーダーもいる。
ウェブ分析会社・シミラーウェブによると、バイナンスやBinomoなど暗号資産取引アプリは、国内最大手クラスの銀行のアプリよりもダウンロード数が多い。
アフマドさんは「暗号資産を止めることはできないのだから、パキスタンは規制を設けて世界の他の国と一緒になるのが、早ければ早いほど好ましい」と話した。
(Umar Farooq記者)
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