ビットコインで「資産を守れる」は本当? インフレの「経済論戦」から考える
オーストリア学派にとってインフレとは通貨の価値を減少させることで生活費の上昇を招く避けるべき現象です。また、富裕層より貧困層に対して比較的高いレートで暗黙的に課税することと同義であると主張し、非対称的な富の再分配を意味すると批判します。
さらに将来への貯蓄意欲を失わせる一方、ギャンブルや投機を促し、公共・民間セクターにおける倫理観を下げる行為とみています。オーストリア学派にとって、インフレとは、自由な市場経済システムの「強靭な」機能を信用しない政策によってもたらせる現象なのです。
対照的にケインズ学派は、インフレ=有害とは一概には言えないという立場です。下記のように、様々なタイプに分けて功罪を分析しています。
労働供給量の増加(ポジティブ)
生産能力を100%発揮できていない経済には、使われていない労働力やリソースが存在することになります。
すぐにでも働ける労働者が余分に存在することで、労働市場における競争力は激しくなり、雇用側にとっては高い賃金を払ってまで労働者を雇う必要がなくなります。失業率が高い時、賃金は典型的に横ばいであり、賃金によるインフレは起きないことになります。
対照的に、失業率が低い時、労働者への需要は供給を上回り雇用側は高い賃金を払って労働者をひきつけようとします。賃金の上昇によって雇用側はモノ・サービスの価格を上げざるを得なくなり、これがインフレにつながります。
つまり、高い失業率と賃金インフレは真逆の関係(フィリップス曲線)であることになり、高い失業率の対極にあるインフレは悪い存在ではないと考えられます。
総需要の上昇(ポジティブ)
経済を循環するマネーが増えるということは、より多くの支出につながり、モノ・サービスへの需要を増やすことから経済に対してポジティブな影響力をもたします。総需要の上昇は、さらなる生産増につながります。
希少性の高い資産保有者にとってポジティブ・法定通貨の預金者にとってネガティブ
インフレとは通貨の購買力が低下することを意味するので、もし個人が自分の財産を現金の形で持っていたらその価値は下がることになります。対照的に、後編で詳しく説明するように、ビットコインや不動産、金など希少性の高い資産の価値は上がります