ビットコインで「資産を守れる」は本当? インフレの「経済論戦」から考える
債務者にとってポジティブ・債権者にとってネガティブ
インフレは、貸したお金の価値が返済時に減少することを意味するため、債権者にとってネガティブです。逆に債務者にとっては借りたお金の価値が減少するのでポジティブです。
例えば、ボブが銀行から3%金利(年率)で100ドルを借りた後、突然10%のインフレが起きたとします。その時、ボブは借金を7%のディスカウント(値下げ)で返済することになります。
ここで注目なのは、債務者としての政府はインフレを起こす動機があるという点です。なぜなら政府は、債券の形で投資家から借りている債務を増税によって返済すると同時に、その債務の価値をインフレによって減らすことができるからです。
以下の計算式は、政府の債務の対GDP比です(The debt-to-GDP ratio)。政府の債務をその国のGDPで割った値です。
Debt-to-GDP Ratio=Government Debt/Gross Domestic Product
政府債務の対GDP比が低い時には政府の債務返済能力が高く、高い時は債務返済能力が低く、債務不履行になる可能性があることを意味します。
世界銀行の調査によりますと、政府債務の対GDP比が77%を一定期間超え続けたら経済に悪影響を与えるとのことです。
執筆時点において、米国政府債務の対GDP比は107.6%と驚くべき高さになっています。これは、第二次世界大戦のあった1946年に記録した118.9%に近い水準です。
ちなみに1974年の米国の政府債務の対GDP比は31.7%です。政府債務のほとんどがインフレによって消えたことを意味します。
しかし実は、日本の状況ははるかに深刻です。財務省によりますと、2020年、日本の政府債務の対GDP比は237.6%と先進国の中で断トツで「我が国は主要先進国の中で最悪の水準」となっています。
購買力の低下(ネガティブ)
最も分かりやすいインフレの影響は、食や住居など生活必需品の価格が上昇するときに感じられるでしょう。価格高騰を恐れて消費者は生活必需品の大量購入に走り、その結果、価格がさらに上昇して購買力がさらに低下するという悪循環を生み出します。
この場合、社会経済的に恵まれない層が最も打撃を受けることになり、生活スタイルの劇的な変化を強いられることになります。
最悪のシナリオは?
インフレは有害なのか? という問いに対して、ケインズ学派とオーストリア学派の間では答えが異なることをみてきました。しかし、過剰なインフレが経済に悪影響であるという点は誰しも合意するでしょう。
マネー供給量が急速に増加し、価格がひと月50%超も上がるといったコントロール不能なペースでの価格急騰は、ハイパーインフレーションと呼ばれています。