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ビットコインで「資産を守れる」は本当? インフレの「経済論戦」から考える

2021年7月14日(水)18時11分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)

インフレはなぜ起きる?

インフレはなぜ起きるのでしょうか?

米国の経済学者でケインズ学派のロバート・J・ゴードン氏は、三つのインフレの原因を一般化して「三角モデル(triangle model)」を提唱しました。

①デマンド=プル型インフレーション(demand-pull inflation)

デマンド=プル型インフレーションは、 総需要が総供給(つまり企業の生産能力)を上回ることを起点として価格が上昇するタイプのインフレです。中央銀行によってもたらされるマネー供給量の増加や低金利の金融サービスの拡大が要因と考えられます。

このタイプのインフレは、過去の歴史で何度も発生しました。悪名高い例の一つは、1986年〜1991年にかけて英国でインフレ率が4.6%から9年ぶりの高水準となる7.6%まで上昇したことです。このインフレは、低金利や住宅価格の高騰、所得税の減少、消費者による楽観的な経済見通しが背景にあったと考えられています。

②コスト=プッシュ型インフレーション(cost-push inflation)

コスト=プッシュ型インフレーションは、生産コストの上昇によってもたらされるタイプのインフレです。需要に変化はないものの、企業が高賃金や高い原材料費などの生産コストを上乗せした価格設定にするため、価格上昇圧力がかかります。

このタイプのインフレで悪名高い例は、「オイルショック」です。1970年代初頭に石油輸出国機構(OPEC)が原油価格の需要が増えたわけではないのに原油価格を上昇させました。また、原油価格の影響を受けた輸送やプラスチック製品、建設業界などにもインフレ圧力がかかりました。

③ビルトイン型インフレーション(built-in inflation)

ビルトイン型インフレーションは、消費者が将来に価格が上昇すると期待して高い賃金を要求するときに起きるタイプのインフレです。賃金上昇→生産コスト上昇となり、結果的にモノ・サービスの価格が上がることになります。

インフレは有害? ケインズ学派VSオーストリア学派

インフレは有害なのでしょうか?経済学においてはオーストリア学派とケインズ学派で見解が分かれています。

オーストリア学派の中心的な存在であるルートヴィヒ・フォン・ミーゼスやマレー・N.ロスバードは、インフレとはモノ・サービスの供給量に対してマネー供給や低金利の融資が増加することと位置付け、すなわち即有害であると結論づけています。

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